(英エコノミスト誌 2016年1月16日号)

中国の指導者たちは為替レートについて、魅力のない選択肢に直面している。

人民元と円の直接取引、6月1日から開始 安住財相

人民元の動きに世界の注目が集まっている〔AFPBB News

 中国の経済運営責任者たちの評判にとって、過去6カ月間は厳しいものだった。厄介な株式市場を何とか従わせようとする彼らの試みは、ほとんどドタバタ劇だ。一方、中国の為替レートの覚束ない扱いは、笑いごとではない。中国の通貨価値の予期せぬぐらつきは、世界各国の市場を混乱させる。だが、将来への確実かつ安全な道筋を与えてくれる為替政策は存在しない。

 中国の窮状に1990年代後半のアジア金融危機との類似点を見て取る人もいる。

 当時は、投資家心理が強気から弱気に転じたことで、インドネシアや韓国、タイといった急成長を遂げる国々が資本流出に見舞われた。

 各国の外貨準備が減少すると、政府は通貨のドルペッグを放棄せざるを得なかった。大幅な通貨下落は金融の大混乱につながった。資産価格が急落し、これらの国が抱える巨額債務がドルベースで膨れ上がったからだ。その後には痛みを伴う景気後退が続いた。

アジア危機の教訓から予防策は講じたが・・・

 だが、アジア危機の教訓は、中国の指導者にも分かっていた。2000年代の高度成長期に、中国は厳格な資本規制を維持し、外国からの直接投資を認めながら「熱銭(ホットマネー)」を回避した。中国人民銀行(中央銀行)は、人民元を安く保つために盛んに外国為替市場に介入し、その過程で外貨準備を4兆ドル積み上げた。

 1990年代に危機に見舞われた国々が絶えず貿易黒字を計上していたのに対し、中国は経常黒字を維持していた。そのため、中国の外貨準備は減少するどころか、むしろ増加した。

 これらの予防措置にもかかわらず、中国も今、金融の逼迫に直面している。資本逃避と資産価値の下落によって、外貨準備はピークから7000億ドル近く減少している。決意の固い資金はずっと、中国の防御柵からゆっくりと漏れ出していた。2015年後半には、より大きな流出の兆候が現れた。12月だけで外貨準備は1000億ドル余り減少した。2015年下半期は、年間1兆ドルのペースで資本が国外に流出した。