(英エコノミスト誌 2016年1月16日号)

新たに欧州にやってきた人々を平和裏に吸収するために、欧州は寛容の精神や男女の平等といった価値観を尊重するよう、移民に強く求める必要がある。

ケルン暴行事件の被害届500件超す、4割が性犯罪 計画的犯行か

ドイツ西部ケルンの大聖堂前で、大みそかの集団性犯罪事件に抗議する人々〔AFPBB News

 4カ月前、3歳のアイラン・クルディ君はギリシャに向かう途中、兄や母親と共に溺死し、その遺体がトルコの海岸に打ち上げられた。アイラン君の写真はすぐに、シリアの内戦を逃れてきた多くの難民の姿を象徴するイメージとなった。この写真も後押しとなり、死の危険を冒しつつ欧州を目指して中東からやってくる人々には亡命申請を認めるべきだということで、一時は世論が一致した。

 ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、ドイツ国境にたどり着いたすべてのシリア人を対象に、難民申請を受け付けると発表した。

 欧州の大部分がこの難民受け入れプロジェクトに参加するかに見えた。

 しかし、欧州がこの計画に加わることはなかった。難民受け入れの責務はドイツとスウェーデンに任され、オランダなどの数カ国が多少の協力をするにとどまった。そのドイツとスウェーデンでも、多数の難民を受け入れようとする意欲は次第にしぼんでいった。そして今、大みそかにケルンをはじめとするドイツの各都市で起きた事件を受けて、この意欲が完全に失われてしまった可能性がある。

 大みそかの夜、難民申請者が多くを占める若い男性の集団が、ケルン駅の構外で女性たちを取り囲み、金品を強奪したうえで性的暴行に及んだ。被害に遭ったと警察に届け出た女性は、600人以上に達した。

 ケルンでの事件以降、欧州の多くの人たちがイメージする難民の姿は、もはや迫害された家族やよちよち歩きの幼児ではなくなった。代わって脳裏に浮かぶのは、中東や北アフリカでは当然とされる女性蔑視の考え方に染まった、恐ろしい若い男たちの姿だ。

欧州と中東、モラルの隔たり

 このような恐怖心は、確かに誇張されてはいるものの、事実無根の話ではない。また、ケルンでの事件の加害者とされる人物のうち、これまでに身元が判明している者の大半はモロッコあるいはアルジェリア出身で、シリアからの難民ではないという点を指摘したとしても、こうした懸念が鎮まることはないだろう。

 豊かでリベラルで宗教色の薄い欧州と、最近の移民の出身国の一部には、大きな文化的隔たりがあるのは事実だ。