(2016年1月15日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

海上貨物輸送の運賃に世界経済の地殻変動の兆しが見られる (c) Can Stock Photo

 1月第3週は、投資家の目が原油価格の急落にくぎ付けになった。無理もない。原油価格は今や1バレル30ドルでしかなく、年初から15%も安くなっている。特に中国の混乱が続いていることなどを受けて、エネルギー市場はさらなる困難の到来を示唆しているのだ。

 世界経済にどのような地殻変動が生じているかを示すもう1つの兆候を探すなら、バルチック海運指数(BDI)に目を向けてみるといい。石炭や金属、肥料といった原材料を全世界に運ぶ外航船の運賃の指標である。

 通常であれば、この指数が一般の人々の注目を集めることはない。何しろ、資本の流れ――あるいは最新のデジタル機器――で投資家の頭がいっぱいになっている時代に港やコンテナの細かいことに目を向けるというのは、いくぶん懐古趣味のような感じもする。

原油価格も顔負けの劇的な急落

 しかし、足元のBDIは原油価格も顔負けの劇的な動きを見せている。ここ数週間一貫して下げてきた指数は1月13日、1985年の指数集計開始以来初めて400を割り込んだ。昨年の夏には1000を大幅に上回っており、2010年には4000前後だった。従って、石炭やセメント、石油などを海の向こうに送る願望に駆られている人は、少なくとも過去30年間のどの時点よりも安い運賃で実行できるだろう。

 これは現代の技術革命が進行している1つの表れにすぎない、と考えられたらどんなにいいだろうか。しかし、海運運賃がこれほど激しく下げている最大の理由は、現代の貿易と世界の経済成長が今年は以前の好況期と異なるパターンを、あるいは西側や新興国の金融市場参加者の予想とは異なるパターンを示していることにある。

 過去10年間、ギリシャから中国に至る世界中の海運会社がドライバルク船(ばら積み船)の輸送能力を増強してきた。増強の第1の理由は、資金を低利で借りられたことに求められる。また西側諸国のプライベート・エクイティ・ファンドなどの新規の投資家も、革新的な資金運用手段を探し求め、海運業に参入した。

 好況のもう1つの理由は、世界貿易は拡大を続けるとの見方が広まっていたことにある。この見方はつい最近まで、不合理には思われなかった。