安倍首相、新国立競技場の「計画白紙」を決断

株価が下落する中、安倍政権のスタンスが微妙に変わり始めている。(資料写真)。(c)AFP/KAZUHIRO NOGI〔AFPBB News

 東京株式市場は、年明けから大幅続落となった。1月14日の日経平均株価の終値は前日比474円安の1万7240円。昨年末から1週間余りで1割以上も下がった。もともと成長率も物価上昇率もほぼゼロになる中で株価だけが上がっていたが、これも中国株の暴落をきっかけに全世界株安になった。

 そんな中で安倍政権のスタンスが、微妙に変わり始めている。かつては「デフレ脱却で日本経済は再生する」と自信満々だった国会答弁が、最近は「デフレ脱却とは言い切れない」という後ろ向きのニュアンスになり、彼の側近であるリフレ派の本田悦朗氏(内閣官房参与)を大使に転出させる方針を決めたと伝えられる。

デフレに戻った日本経済

 日本経済は、デフレに戻りつつある。日本銀行の指標とする消費者物価指数(生鮮食品を除く)は8月から連続3カ月マイナスで、14日に発表された12月の企業物価指数は前年比3.4%の大幅マイナスだ。これは原油価格が暴落し、一時は1バレル=30ドルを切った状況が影響している。

 ただし今のところ、それほどあわてるような状況ではない。デフレ自体は悪いことではなく、エネルギー価格が下がることは望ましい。ただ株価の水準訂正は経済に影響を与えるだろう。これを証券業界で使われるバフェット指標で見てみよう。これは上場企業の時価総額を名目GDP(国内総生産)で割ったもので、1を超えるとバブルだとされる。

名目GDPと東証の時価総額(年末)、出所:東証ほか

 図のようにバフェット指標で見ると、1980年代後半は大幅なバブルだったが、その後はずっと日本株は過少評価され、小泉政権のときにやっとGDPに近い水準に回復した。その後はリーマン・ショックでまた大幅に下落したが、第2次安倍政権になった2013年からは過大評価になっている。

 図の右端は年明けの暴落をプロットしたものだが、まだGDPに比べてやや割高なので、もう少し下がるのではないか。要するにアベノミクスの「偽薬効果」が剥げ落ち、日本経済の実力に近い水準になっているだけで、それほど悲観する必要もない。