(2016年1月14日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

ビール世界最大手のドイツ支社長を解雇、飲酒運転で事故

大型買収を繰り返すアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ)〔AFPBB News

 米国とベルギーを本拠地とし、ブラジル人が大株主になっているコングロマリット(複合企業)が、本物としての箔を付けるために米アリゾナ州のクラフトビールメーカーが醸造するスコットランド式ビールを買収するとき、世界は完全におかしくなっている。アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ)は先月、「キルトリフター」という看板商品を持つフォー・ピークス・ブリューイングを買収した(「一口飲めば、キルトをまとった男たちが作ったに違いないと断言するでしょう」というのが、キルトリフターの謳い文句)。

 総額1080億ドルのSABミラー買収計画の資金を調達するために今週過去最大の社債発行に踏み切る可能性があるABインベブは、なぜこの「なりすまし」ビールを自社開発しなかったのかと不思議に思う向きもあるかもしれない。

 確かに、ABインベブは傘下に数多くの醸造所を持ち、多額の資金を投じた研究開発施設も有している。

 米国で最も人気のあるビール「バドライト」(クリアでクリーン、そして味もほとんどないタイプのバドワイザー)も大量に製造している。

様変わりしたビール市場

 しかし、最近の食品・飲料製造業界はそういうやり方をしない。クラフトビールからナチュラルヨーグルト、そして「ビーン・トゥ・バー」のチョコレート*1に至るまで、オーガニックなプレミアム製品を新たに生み出す仕事は勇敢な外部の者の手に委ねられることが多い。一方、この企業買収ブームの立役者であるブラジルのプライベートエクイティー会社3Gキャピタルは「ゼロベース予算」なる手法でコストを削減している。

 コングロマリットは時折、自分たちが作ったわけではない製品に飛びつく。ABインベブは2011年以降、クラフトビールメーカーを6社買収しており、コカ・コーラは2013年に英国のスムージーメーカー、イノセントを完全に支配下に置いた。

 この手法は成功する可能性があるものの、安価ではない。例えば米国のコンステレーション・ブランズは昨年11月、バラスト・ポイントというカリフォルニア州サンディエゴのクラフトビールメーカーの買収に10億ドルをつぎ込んでいる。

 ビール市場は一変した。米国では業界再編が進み、小さなメーカーは1980年代までにほとんど消えてしまったが、その後目覚ましい復活を遂げている。クラフトビールメーカーの数は今日では4100社に上っており、前回のピーク(1873年)をも上回った。大手のブランドが伸び悩む一方で――バドワイザーは販売が減っている――、クラフトビールは2ケタ成長を続け、2014年には市場シェアを19%に伸ばしている。

*1=「bean-to-bar」chocolate、カカオ豆の選別からチョコレートの製造までを同じ業者が一貫して行うチョコレートのこと