(英エコノミスト誌 2016年1月9日号)

砂漠の王国は、中東を支配すると同時に、自国経済を現代化しようと苦闘している。

サウジで斬首刑に処せられたミャンマー人女性、死の間際まで無実訴え

サウジアラビアのイスラム教の聖地メッカにある聖モスクと、それを見下ろす時計台〔AFPBB News

 サウジアラビアは長年にわたり、惰性で動いているように見えた。石油が生む莫大な富と米国の庇護の力を頼みに、国内では平穏を手に入れ、近隣諸国には停滞を強いてきた。だが、原油価格は急落し、米国は中東の主導者的立場から身を引き、中東地域は戦火に包まれている。サウジアラビアの権力も新世代に移った――なかでも特に目立つのが、サルマン国王のお気に入りの息子であるムハンマド・ビン・サルマン副皇太子(30歳)だ。変化の砂嵐が砂漠の王国を目覚めさせつつある。

 その結果として目に見えて現れているのが、国内での反体制派の容赦ない取り締まりと、国外での強硬な姿勢だ。つい最近も、そうした傾向が身も凍るような出来事として示されたばかりだ。

 1月2日、サウジアラビアは47人の死刑を執行した。その大半はアルカイダとつながりのあるテロリストだが、なかには国を支配するサウド家の打倒を訴えただけの人々も含まれていた。そのうちの1人は、シーア派の有力な宗教指導者だった。

 これに反発したイラン国民がテヘランのサウジ大使館に火を放ったことを受け、サウジはイランとの外交、貿易、航空便の運航を停止した。過熱している中東地域の混乱に拍車をかける愚かな行為だ。

 だが、ニュースの見出しにはなっていないものの、それとは別の強硬姿勢も、同様に重大な結果を招く可能性がある。ムハンマド副皇太子は、サウジアラビアの閉鎖的な経済と政府を開放する青写真を描いてみせた。副皇太子によれば、国営石油会社サウジアラムコの株式を売却する可能性もあるという。

 地政学的な威圧的姿勢と全面的な経済改革の組み合わせは、大きな賭けだ。その結果は、サウド王家の存亡を左右し、アラブ世界の未来の姿を決めることになるだろう。

サッチャリズムはアラビア語で何と言う?

 2014年には1バレル110ドルだった原油価格が暴落し、現在の35ドル以下にまで落ち込んだのは、1つにはサウジアラビアが石油市場のシェアを守る決意を固めているからだろう。

 とはいえ、石油に支配され、政府の収入の90%までも石油に頼っている国にとって、原油価格の下落は時限爆弾になる。サウジの2015年の財政赤字は、国内総生産(GDP)の15%という驚くべき規模に膨らんだ。サウジの外貨準備高は6500億ドルだが、それもすでに1000億ドルほど減少している。