現代音楽の巨匠ピエール・ブーレーズ氏死去、NYフィルなど追悼

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のリハーサルに臨むピエール・ブーレーズ氏。オーストリア・ウィーンで(2010年3月16日撮影、資料写真)〔AFPBB News

 暮れの休み、缶詰になって英語の本を書き上げてしまうつもりだったのですが、雑務雑務で全く手がつけられず、年を越してしまいました。

 指揮の教科書で3月には形のあるものにして、この仕事を一緒に考えてくださった恩師にお送りしようと思っていたところに、訃報が飛び込んできてしまいました。

ピエール・ブーレーズ、フランスの作曲家=指揮者です。私が作曲家=指揮者という仕事の形を知り、それを志し、この38~39年間ほど努力してきたライフワークの灯明のような人が亡くなってしまいました。

 数学を学んだ彼が音楽で本質的な仕事をしたので、ティーンの私は「彼の先」を目指して物理を専攻することにしました。

 作曲家として本質的な楽譜の読解ができる彼がナチス協力で傷のついたヴァーグナーのバイロイト祝祭劇場に新しい灯を点したので、18歳の私もヴァーグナーに取り組み、やはり「彼の先」を目指して30年、バイロイトと重要な仕事をすることもできました。

 音楽家の彼が問題意識を徹底する中で、必要を痛感して芸術行政官としてフランス国費を動かして新しいインフラストラクチャーを作り出したので、私も国立大学教官となって以降、ここでも「彼の先」を目指してこの17年、営利と無関係に徹底して基礎の仕事を進めることができた。

 ベラ・バルトークとピエール・ブーレーズ、この2人の仕事の後ろ姿がなければ、いま私が進めている何一つとして、影も形もなかったことは間違いありません。

 このコラムには日本語で一般の読者に幅広く共感していただけ、参考にもしてもらえるだろう内容を記すので、10年来を振り返っても私の本当のライフワークにはほとんど言及することはありませんでした。

 が、ブーレーズの訃報に接し、多くの読者の皆さんがあまり想像しておられない、私たちが本当に力を傾注してきた「基礎」とは何か、お話してみたいと思います。

時代を乗せるプラットホーム

 JBPressはネット連載ですから、この誌面を見ておられる方は(プリントアウトでご覧でない限り)PCのモニター画面でこの文字を読んでくださっていると思います。

 昨今はノート・パソコンやタブレットの普及も著しいですが、デスクトップマシンで読んでおられる方もおられるでしょう。

 いずれにしても、パソコンですから電源が必要で、コンセントとつなぐACのジャックが(たぶんサイドに)ついていると思います。

 電源ケーブルをそこに差し込むと、電源ボードに(整流された)電圧・電力が供給される。この「電源ボード」に多くの場合併設されているとのことですが、大半のPCには「音声ボード」と呼ばれる、音響・音声を処理するデジタルシステムが搭載されている。

 この今日標準的な「音声ボード」はコンピューターができてこの方70年、様々な技術と技術契約の結晶として成立しているわけですが、現在の音声ボードの確立にあたって大きな役割を果たした1つに「IRCAMボード」と呼ばれる「初期の音声ボード」がありました。