TPPで注目される「地理的表示保護制度」とは?

地域ブランド化と6次産業化で強い農業を目指せ

2016.01.08(Fri) 白田 茜
筆者プロフィール&コラム概要

 販売金額総額、事業体数、従事者数とも、「農産物の加工」「農産物直売所」の占める割合が高くなっている。新たなノウハウが必要になる「観光農園」「農家民宿」「農家レストラン」などに比べ、「農産物の加工」「農産物直売所」は取り組みやすいのかもしれない。

 国も6次産業化に対してさまざまな支援をしている。事業化可能調査、人材育成、新商品開発、販路開拓の支援、加工・販売施設への支援などだ。2016年度には26億8400万円もの予算を要求し、6次産業化の市場規模を2013年の4.7兆円から2020年に10兆円までに拡大することを目標としている。

 このような取り組みが全国的に活発になっているのはなぜか。背景には、国内市場が縮小する中、農業の産出額が低下していることがある。1990年と2005年を比較すると農業所得は半減しているという。また、農業者の高齢化も進み、地域では担い手不足が深刻化している。6次産業化によって所得が増えれば新たな雇用の創出につなげることができる。

立ち上がる農家のネットワーク

 従来通りのやり方では立ち行かなくなってきているという農家の厳しい現状がある。そんななか、新たに立ち上がった農家の取り組みを最後に紹介したい。

 宮崎県都城市で「Seed(都城生産者コネクション)」という農業者を中心としたネットワーク組織がある。会員数は現在60名。農業生産者を中心に、同市内の飲食店や加工業者など、「食」に関わる企業や団体と連携し相互に課題を解決し、さまざまな取り組みを継続的に続け地域社会への貢献を目的として活動を行っている。

 Seedの代表理事を務める「おかもと自然薯農園」代表の岡元孝仁氏は、Seedのプロジェクトの1つとして「小麦ブートキャンプ」を立ち上げた。岡元氏がプロジェクトリーダーとなり、飲食店のイタリアンレストラン 「mona-mona」や、畜産業の松山牧場など異業種の関係者が参加し、専門家を招聘して強力系小麦「ミナミノカオリ」の特性を活かした商品開発を行っている。アドバイザーは、小麦に造詣が深く、パンやケーキ店などを紹介するサイト「パナデリア」を運営する三宅清氏だ。今年度には新たに複数の農家と加工業者が加わる予定だという。

 生産者の弱点である“販路”の確保を予め想定し、生産者と加工、販売を手がける人たちが連携して商品開発を行う。将来的には、生産拡大につなげ、地域の新たな産品の創出を目指したい考えだ。

 Seedは2014年から同市の生産者を中心に活動開始を開始。都城市の6次産業化推進事務局と共催し、大型消費地圏からバイヤーを招聘しての商談会や農業者のための資金調達イベントなどをはじめ、さまざまな取り組みを行っている。

 岡元氏は「現状では農家に価格決定権がない。売れるしくみを自分たちで考えていくことが大事。農家の経営スタイルは変えないで自立化する取り組みを行っていきたい」と語る。

 都城市の取り組みからはさまざまなヒントが得られる。農業者がネットワークをつくり従来にない着想を得ていること、ブランディングの可能性がある農作物に焦点をあてていること、そして、商品開発前から異業種と連携して販路を確保しようとしていることなどだ。

 日本でも地域団体商標などさまざまな制度が整えられ、農業の高付加価値化と地域活性化を後押ししている。いまこそ農業者がビジョンをもち、売れる仕組みを自分たちで考えることが求められているのだ。

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1978年佐賀県生まれ。佐賀県庁で食品のブランド化に関わる。その後、大学院で農業政策や食品安全に関するリスクコミュニケーションを学ぶ。食品コンサルタント会社を経て、現在は社会的関心が高い科学ニュースについて専門家のコメントを収集しジャーナリストに提供する活動をしている。関心のあるテーマは、農業、食品流通、食品安全、リスクコミュニケーション。


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