(2015年12月29日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

ノーベル物理学賞の中村氏 「LED照明の夢実現に満足」

2014年10月、米カリフォルニア州サンタバーバラでノーベル物理学賞の受賞決定後に会見する中村修二氏〔AFPBB News

 今から20年以上前、青色発光ダイオード(LED)の試作品ができあがったその瞬間から、中村修二氏はこの発明が世界を変えることになると分かっていた。

 数年かかったが、この発明はスマートフォン、太陽電池で駆動する街灯、高出力な自転車ライト、「iPad(アイパッド)」、おもちゃのライトセーバー、電子書籍リーダーの「Kindle(キンドル)」、薄型テレビなど数十億台の製品につながっていった。

 また今では、青色LEDの次の奇跡が開発の途上にあり、光を使って非常に広い帯域を作り出す「LiFi(ライファイ)」という次世代通信ネットワークの中心部分になる見通しだ。

 中村教授はこうした展開の一部を予想していた。愛媛県出身のけんかっ早いエンジニアだった教授は1990年代の初めという早い時期から、20世紀が白熱灯の時代だったとしたら、21世紀の生活はLEDの明かりの下で暮らし、働き、遊ぶ時代になると分かっていた。教授の青色LEDによってそれらがすべて可能になるのだ。

 教授が知らなかったのは、ストックオプションがどのような仕組みになっているかとか、何かを発明しても日本ではごくわずかしか報われないということだった。

青色LEDが日本の産業界にもたらした衝撃

 また、2014年にはこの発明によりノーベル賞を受賞したが、青色LEDが日本の産業界に強烈なインパクトを与えることや、今日でも語り草になる訴訟が行われることまでは予想していなかった。強くてエネルギー効率も高い種類の光を完璧に作り上げたものの、それを産み落とした日本の産業システムに激しく跳ね返ることになるとは思いもしなかったのだ。

 青色LEDの特徴は、長年追い求められてきた青・赤・緑の3色がそろい、従来型の白熱灯の数分の一の電力で白色光を作り出せるところにある。LEDは比較的高価だったが、中村教授の技術はすぐに市場を席巻できるように思われた。だが実際には、闇の世界の征服はゆっくりとしか進んでいない。日本が従来型の白熱灯と蛍光灯の販売を2020年以降やめると決めたのは、つい最近のことだ。

 中村教授は2015年、青色LEDの省エネルギーへの功績が認められて「グローバルエネルギー賞」を受賞した。この賞は、ロシアが革新的な技術の促進を目指して2002年に設けたものだ。