(2018年12月28日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

海面上昇対策、サンゴ礁で低コストに実現可能 米研究

世界中でサンゴ礁が消滅しつつある〔AFPBB News

 中国の人工島はアジアの海の支配権を巡る新たな争いを煽っているが、地域の超大国である中国が大洋から軍事基地を浚渫(しゅんせつ)している間に日本は浴槽で島を1つ育てている。

 この島は沖ノ鳥島と呼ばれている。陸地から遠く離れ、嵐に見舞われるフィリピン海の環礁で、高潮時には2つの露頭が海面から突き出す。

 日本は沖ノ鳥島を自国領土の最南端と見なしているが、中国はこれは島などではなく、ただの岩だと言っている。

 数千年にわたり、陸地が沈むにつれて上層部にサンゴの層が育ち、環礁のてっぺんは海面上に出ている形が保たれてきた。だが、沖ノ鳥島は死につつある。気候変動によって海面が上昇し、サンゴが死んでいくからだ。残っている地形を台風がかじっていく。

 このため日本は岩礁を再び育てる必死の取り組みに乗り出している。その結果次第で戦略的な要塞の運命が決まり、南シナ海に法的な波紋を広げるとともに、気候変動に脅かされている他の環礁に希望を与えられる可能性がある。

 鉄板の上で育つ稚サンゴがいっぱいに詰まった浴槽は、久米島の沖縄県海洋深層水研究所の温室にある。ここで働いている人たちは、いかにして沖ノ鳥島からサンゴを持ち帰り、卵を採取したか説明してくれる。稚サンゴをこの研究所で1年間育て、その後、環礁に再び移植するのだという。

科学者にとっては海との戦い

 科学者たちにとっては、これは海との戦いだ。彼らは沖ノ鳥島から持ち帰ったサンゴを増殖させ、再び島に移植することに成功したが、それでは十分ではない。東京大学の茅根創教授は「次の技術は・・・サンゴの成長と、サンゴ砂利・サンゴ砂の蓄積によって海面の上昇についていくことだ」と言う。

 「我々の実験は・・・進行中だ」。東京海洋大学の大森信名誉教授はこう語る。「サンゴを植えた土地面積の拡大では前進を遂げたが、移植サンゴの死亡率は高いから、島のサンゴが増えているとはまだ言えない」

 どれだけ移植を行っても、それだけでは環礁を復活させられないと大森氏は言う。むしろ、目標は移植サンゴが環礁全体に広がるようにすることだ。これほど遠く離れた場所で作業するのは困難だ。サンゴを監視するのが難しいからだ。