(2015年12月22日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

欧州連合(EU)や各国政府は四方八方から押し寄せてくる困難に耐えられなくなっているように見える (c) Can Stock Photo

 ギリシャの詩人コンスタンディノス・ペトルゥ・カヴァフィスは1898年の「野蛮人を待つ」という作品に、崩壊しつつある権力構造を支えるために外国からの謎めいた脅威を作り出したり誇張したりする政治体制を登場させている。このカヴァフィスの代表作に描かれた冷めた口ぶりのエリートたち、空疎な儀式、あちこちに見られる破滅の予兆は、2016年の欧州への警鐘になるはずだ。

四方八方から押し寄せる困難

 テロ、移民、国内での極右・極左勢力の台頭、ユーロ圏の統一性、失業、さえない経済成長、欧州の防衛――。

 どれを取っても、ブリュッセルにある欧州連合(EU)の機関とその加盟国政府は、四方八方から一度に押し寄せてくる数々の困難にますます耐えられなくなっているように見える。

 これにはヨーロッパ人だけでなく、米州やアジアのパートナーや友人たちも懸念を覚えているはずだ。

 これはEUという枠をはるかに超える規模の問題だ。そもそも、欧州で起こること(あるいは起こらないこと)のすべてがEUのせいであるわけではない。この問題は、世界において欧州が相対的に衰退し、近隣諸国での出来事にさえも容易に対処できなくなっているということでもある。

 また西側社会全体で文化、経済、政治、技術に変化が生じているということでもある。この変化のためにおなじみの暮らしのパターンが乱され、統治者に対する市民の信頼が揺らぎ、政府も果断に行動しづらくなっているのだ。

 それでもなお、懸念の中心はやはりEUである。計28カ国で人口も5億人を超える裕福な民主主義国のクラブでありながら、次々に発生する危機への対応が不適切なために、EUは部分の総和が必ず全体以下になる運命なのだという残念な印象を持たれてしまっている。

「ニワトリの群れの方がよっぽど統制の取れた戦闘部隊」

 政治指導者たちからはもっと効率的で緊密に統合されたEUを目指すという威勢のいい声が上がる――2015年にも数多く聞かれた――ものの、理想に対するリップサービスで終わってしまうことがあまりにも多い。

 この問題がよく分かる実例は、防衛協力におけるEUのひどい取り組みに見ることができる。「欧州の共通防衛政策を見て思うのは、ニワトリの群れの方がよっぽど統制の取れた戦闘部隊に見えるということだ」。今年10月にこんなことを言ってのけたのは、ジャン・クロード・ユンケル欧州委員会委員長その人だった。