(英エコノミスト誌 2015年12月19/26日合併号)

1つの企業がいかにして物語ビジネスを支配するに至ったか。

スター・ウォーズ新作を1日も早く&大金支払い海渡ったファンら

仏パリの映画館で、映画「スター・ウォーズ」シリーズのコスプレをして同シリーズの新作「フォースの覚醒」の上映を待つ人々〔AFPBB News

 遥か彼方の銀河から、すぐそこの映画館へ――。「スター・ウォーズ」シリーズの最新作「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」は、今年のクリスマスシーズンの避けられない話題作だ。

 シリーズの権利を所有するルーカスフィルムは、2012年に米ウォルト・ディズニーに約41億ドルで買収された。

 その買収後に公開される最初の「スター・ウォーズ」作品となるこの新作には、単なる人気SFシリーズの復活以上の意味がある。

 ディズニーが過去10年にわたり一連の抜け目のない買収により成功を収めてきた手法の最新事例なのだ。

 ピクサー・アニメーション・スタジオ、マーベル・エンターテインメント、そしてルーカスフィルムを買収したディズニーは、吸収した会社の知的財産を巧みに利用し、それを通じて、神話の産業化における市場のリーダーとしての地位を固めてきた。ディズニーの成功の基盤は、現代の神話の創造に欠かせない3つの要素、「転義法(比喩)」、「技術」、「玩具」を掌握していることにある。

ホメロスからハン・ソロまで

 まず、転義法の面から見ていこう。「マイティ・ソー」から「トイ・ストーリー」に至るまで、あらゆるディズニーの財産は神話構造という使い古された仕掛けを通じて、文化的に共鳴できる物語に仕立て上げられている。ディズニーの創業者ウォルト・ディズニーは、寓話の力を直感的に理解していた。

 「スター・ウォーズ」を生んだジョージ・ルーカス氏は、「単一神話論」を説いた米国の比較神話学者ジョーゼフ・キャンベルの著作を熱心に研究した。単一神話の構造では、1人の英雄が天命に応じ、導き手となる者の助力を得て別世界へと旅立ち、さまざまな試練を生き抜き、最後には勝利を手にする。

 ディズニーもルーカス氏も、古代の神話や伝説を積極的に利用してきた。「マーベル・ユニバース」(マーベル作品に共通する架空の世界)では、さらに、ギリシャ・ローマ神話や北欧神話が大規模かつ直接的に用いられる(それを考えると、ディズニーが、知財保護法の厳密な適用や、永久とも思える著作権の延長に意欲を燃やしていることは、どこか皮肉に映る)。