(英エコノミスト誌 2015年12月12日号)

米国や欧州各国で、右派系のポピュリスト政治家が躍進している。その脅威は現実のものだ。

トランプ氏、障害ある記者の「物まね」を否定

数々の問題発言にもかかわらず、高い支持率を維持するドナルド・トランプ氏〔AFPBB News

 ポピュリストたちは新たな不満を抱えている。彼らは長年、「自分のことしか考えていないエリートには働く一般庶民の問題を解決できない(あるいはその意思がない)」という信念を根拠に、大西洋の両岸で勢力を伸ばしてきた。ここへ来て、ポピュリストは「政府には国民の安全を守れない(あるいその意思がない)」との不安にも乗じ、勢いを得ている。

 米国では12月7日、イスラム国(IS)に忠誠を誓った夫婦が14人を殺害したカリフォルニア州サンバーナディーノでの銃乱射事件を受け、ドナルド・トランプ氏がイスラム教徒の米国への入国を「全面的に禁止」すべきだと主張した。

 共和党の大統領候補指名争いでトップを走る同氏は、それ以前にもモスクの閉鎖や米国在住のイスラム教徒に対する登録制度の導入を提案している。「我々には選択の余地はない」というのが、トランプ氏の言い分だ。

 フランスでトランプ氏に相当するのが、極右政党の国民戦線(FN)だ。11月のISによるパリのテロ攻撃の後、12月6日に実施された広域地方行政区の地域圏議会選挙の第1回投票では、僅差ではあるもののFNが全国の合計でトップの得票率を獲得し、13州のうち6州で首位となった。党首のマリーヌ・ルペン氏と姪の得票率はそれぞれ40%を超えた*1

 トランプ氏とルペン氏だけではない。米国、さらには欧州の一部で、右派ポピュリストへの支持が第2次世界大戦以降では前例がないほど高まっている。不安を利用するこうした政治家は、テロを背景に、西洋社会が当然のものと受け止めてきた開かれた姿勢や寛容の精神に深刻な脅威を及ぼしている。

怒れる年配者たち

 最近になって発生したいくつかのテロ攻撃の前から、右派のポピュリストは頭角を現しつつあった。10月以降、トランプ氏に加え、同氏ほど攻撃的ではないものの極端という点ではさほど変わらないテッド・クルーズ氏とベン・カーソン氏は、3人合わせて共和党有権者の50%を超える支持率を常に獲得している。

 欧州を見ると、ポピュリストはポーランドとハンガリーで政権を握り、スイスとフィンランドでは連立政権に加わっている(しかもこれにはギリシャの急進左派連合=SYRIZA=などの左派系ポピュリストは含まれていない)。

*1=この記事が出た後の第2回投票では、FNは全ての地域圏で勝利を逃した