(2015年12月9日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

米連邦準備理事会(FRB)は来週、9年ぶりの利上げに踏み切ると見られている (c) Can Stock Photo

 欧州中央銀行(ECB)は先週、市場を喜ばせるには不十分だったとはいえ、金融政策を緩和した。しかし、米連邦準備理事会(FRB)は短期金利を来週引き上げると広く予想されている。最も重要な2つの中央銀行の進路が乖離(かいり)することは、実は重大な出来事なのだと判明することになりそうだ。

 では、それぞれのマンデート(使命)に照らして、この乖離は理にかなっているのだろうか。

 そして、この乖離が世界に何らかの問題をもたらす恐れはないのだろうか。

 一見したところでは、最初の問いの答えはごく簡単に「イエス」となる。景気の現状が大きく違うのだから、FRBとECBは異なる政策を遂行してしかるべきだ。

米国と欧州の経済状況の違い

 ジャネット・イエレンFRB議長が先週指摘したように、米国経済はあの大不況以降、持続的な回復を遂げてきた。失業率は世界金融危機後のピークである10%から5%にまで低下しており、消費者物価指数のコア指数――食品とエネルギーを除いた指数――も上昇して目標の年率2%に(達してはいないが)近づいている。

 こうした事実を踏まえれば、米国経済は潜在成長率を優に上回る成長を遂げているうえ、金融を引き締め始めてよいほど完全雇用に近い状態にあると言えそうだ。

 一方のユーロ圏は、マリオ・ドラギECB総裁が先週ニューヨークで行った重要な講演で指摘した通り、米国とはかなり異なる状況にある。ユーロ圏はあの大不況とその後の圏内の景気後退から力強い回復を遂げていない。それどころか、今年の第2四半期になっても実質ベースの内需が金融危機前の水準を3.5%下回っていた。失業率は2013年初めにつけたピークの12.1%から10.8%に下がっただけだ。

 ドラギ氏が強調していたように、ECBは現在、物価の安定――ECBの定義によれば、消費者物価上昇率を「2%未満だが2%に近い水準」にすること――という使命を果たせずにいる。10月の消費者物価統計ではコア指数の上昇率が前年比1.1%にとどまり、総合指数の上昇率に至っては同0.1%でしかなかった。実際、ユーロ圏のコア指数の前年比上昇率は2013年3月以降、ずっと2%を下回っている。