(2015年11月27日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

露大統領、トルコから「まだ謝罪がない」 露軍機撃墜

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は最近、多少輝きを失ったが・・・〔AFPBB News

 チェスの名人たるロシアのウラジーミル・プーチン大統領に、いったい何が起きたのだろうか。筆者はもう、プーチン氏のことを、世界の先進民主主義国の弱く、煮え切らない指導者たちを目立たせる大胆かつ決断力のある人物として描く論評を数えるのをやめた。誇張は常に、誇張でしかなかった。我々は今、ロシアの本当の脆弱性を垣間見ている。

輝きを失ったプーチン大統領

 どんな尺度で見ても、プーチン氏は輝きをいくらか失った。

 シリアにおけるロシアの軍事作戦は形勢を一変させるゲームチェンジャーとして広くもてはやされた。

 米国のバラク・オバマ大統領なら絶対にそのリスクを取らないような大胆なチェスの序盤の布石だとされていた。

 プーチン氏は部隊を派遣することで、シリア内戦を終わらせようとする国際的な努力の中心に自身を据えた。同氏はシリアのバシャル・アル・アサド大統領の強制排除を求める西側の要求を潰した。ウクライナに侵攻した後、礼儀正しい外交界から追放され、暗がりにいたしかめ面の人物が突如、テーブルの上座に戻ってきた。

 流線形のロシアの戦闘機と水面下の潜水艦がシリアの反政府勢力を爆撃するテレビ映像は、偉大なる愛国的復興の指導者としてのプーチン氏の自己像を磨き上げた。ロシアはもう超大国ではないなどと誰が言ったのか。人は忘れっぽい。西側の視聴者が空を照らすミサイルを、歴史の弧を曲げる米国の力と誤解したのは、そう昔の話ではない。読者は2003年春のバグダッドを覚えておいでだろうか。

 プーチン氏を重要人物扱いする動きは、自称イスラム国と関係のあるテロリストらが爆弾を仕掛け、エジプトのリゾート地シャルムエルシェイクから帰る飛行機に乗っていた220人近いロシア人観光客を殺す前から始まっていた。この殺害は、ロシアのシリア介入に対する報復措置だと標榜された。

 また、シリア国境を越えてトルコ領空に入り込んだと言われるロシアのジェット機をトルコの戦闘機が撃墜した先日の一件の前の話であり、ウクライナの破壊工作員が――ウクライナ政府と結託したかどうかはともかく――送電線を爆破することでロシアの占領下にあるクリミアで停電を引き起こす前のことだった。