(英エコノミスト誌 2015年11月14日号)

今回ばかりは、原油価格がOPECではなく需給に反応している。

原油急落、2015年は生産国で経済危機などの恐れも

昨年急落した原油価格は世界経済に大きな影響を与えた〔AFPBB News

 1800年代後半のジョン・ロックフェラーのスダンダード・オイルから、1930年のテキサス鉄道委員会を経て、1960年以降の石油輸出国機構(OPEC)に至るまで、長い間、さまざまな組織や機関が自己の利益のために石油市場を支配し、安定化させようとしてきた。石油市場が、カルテルの気まぐれよりも需要と供給の法則に支配される、普通の市場のように行動するのは極めて稀だった、と米コロンビア大学グローバルエネルギー政策センターのジェイソン・ボードフ所長は言う。今がそんな時期の1つだ。

石油業界に異変

 供給を例に取ってみよう。サウジアラビアは1年前、OPECが原油生産を減らすことで相場の引き上げを図るの認めることを拒否した。

 安い原油価格が競争相手、特に米国のシェールオイル生産者を廃業に追い込むことを期待してのことだ。

 サウジアラビアはそれ以来、パイの取り分を大きくするために、自国の生産コストの低さを利用してきた。また、中国に石油を売るために、ロシアや他のOPEC加盟国と戦ってきた。シティバンクのセス・クラインマン氏は、サウジアラビアは最近、スウェーデンとポーランドの製油所に向かうロシアの原油に取って代わり、欧州全域で価格を下げようとしたと言う。

 大手上場石油企業や競合する多くの国営石油企業など、より高コストの生産者も不本意ながら理性的に振る舞っており、今年は少なくとも1500億ドルの投資を中止、来年もさらに投資を減らすつもりだ。

 石油プロジェクトはリードタイムが長いため、こうした投資削減が生産減少につながるには時間がかかる。その間は、生産者は当然、既存施設からより多くの原油を生産して値下がりを補おうとする。だが、最終的には投資削減は生産を減らす。

 時に石油市場を大混乱させることがある地政学的な緊張は、今年はあまり見られない。これは部分的には、OPECが石油生産のクオータ(割当)を多かれ少なかれ放棄したためだ。この事実は、イエメンでのサウジアラビアとイランの代理戦争のように、かつて生産上限の違反につながりかねなかったOPEC内の論争が、価格に影響することがほとんどないことを意味する。