(2015年11月16日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

実行犯一人の身元特定、パリ連続襲撃事件

11月14日、仏パリの連続襲撃事件の現場の一つとなったコンサートホール「バタクラン」付近で、犠牲者を追悼するためにささげられた花束やメッセージのそばで祈る女性〔AFPBB News

 先週金曜日の午後9時20分ごろ、観客で埋め尽くされた競技場「スタッド・ド・フランス」に座っていた時に、私はパリのテロ攻撃の最初の爆発音を聞いた。だが、フランスとドイツのサッカー親善試合を観戦していたほぼすべての人と同じように、あれが我々を狙った爆弾だったとは思いもしなかった。

 我々パリ市民は、ゆっくりと実感がわき、さまざまな事実に気づく週末を過ごした。

 特に大きかったのは、パリの被害は軽くて済んだという実感だ。一連の襲撃は、ずっとひどい事態を意図したものだった。

 最初の爆発は競技場の外から聞こえてきたようだった。多くの観客は、フランスの試合でよくあるような無害な「農薬爆弾」か爆竹だと思って喝采を送った。

 数分後に2度目の爆発が起き、地面が揺れた。インターネットをいろいろ調べてみたが、負傷者が1人出たとされる「爆発」に関する最初のフランスの報道を見つけたのは、ざっと20分も経った後のことだった。その間、試合は続いた。

もっと犠牲者が多くても不思議ではなかったテロ

 今になってみると、3人の自爆テロ犯が競技場内で自爆し、フランスとドイツのゴールデンタイムのテレビ番組で、大虐殺と恐らくは大群衆の殺到を引き起こす計画を立てていたようだ。今回の試合はフランス代表チームにとって2015年最大の試合であり、そのためにISISは11月13日に襲撃を計画したのだろう。

パリ週末のスポーツ行事、全面中止 連続襲撃事件で

11月13日、サッカーのフランス代表対ドイツ代表の親善試合が行われたパリ市北郊のスタジアム「スタッド・ド・フランス」で試合後、連続襲撃事件の報を受けピッチに避難した観客〔AFPBB News

 私はこの14年間、テロ攻撃が起きるのではないかと思いながら大きなスポーツ大会を観戦してきた。大規模なスポーツの試合は最も視聴率の高いテレビ番組で、テロリストにとっては極めて魅力的だ。

 テロ犯は今回入場することができず、競技場の外で自爆した。「イラク・シリアのイスラム国(ISIS)」が世界中のゴールデンタイムの番組に登場するには、パリの他の場所での襲撃が必要だった。