(2015年11月11日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

危機への対応を誤ると、成長トレンドを恒久的に痛めつけることになりかねない (c) Can Stock Photo

 米国と欧州はいまだに、2007~09年の金融危機とそれに続くユーロ圏危機による負の遺産を抱えている。この結末を、もっと優れた政策で防ぐことはできなかったのだろうか。もしできたとしたら、それはどのような政策だったと考えられるだろうか。

 回復は進んでいるが、それは限られた意味においてでしかない。危機の直撃を受けた国々の国内総生産(GDP)の変化率は、ほぼすべての国でプラスに戻っている。

 しかし、GDPそのものの値は、危機前のトレンドから予想できた可能性のある水準を大幅に下回ったままだ。

 そして、主に生産性の伸び率が下がっていることから、成長率はほとんどの国で回復していない。ユーロ圏の場合、GDPは2015年第2四半期になっても危機前の水準を下回っていた。危機に見舞われたユーロ導入国の産出額は、危機前の水準にはまだほど遠い。これらの国々は今後、失われた10年や20年に悩まされることになるだろう。

ドイツ経済がそっくり消えたような損失

 米ジョンズ・ホプキンス大学のローレンス・ボール教授が高所得国23カ国のサンプルで研究したところによれば、失われた潜在産出額の規模はスイスの0%からギリシャ、ハンガリー、およびアイルランドの30%超までばらついている。合計すると、今年の潜在産出額は、危機前のトレンドから予測されたであろう水準を8.4%下回ったと考えられる。

 「グレート・リセッション(大不況)」によるこのダメージは、ドイツ経済がそっくり消えてしまった場合のそれとほぼ同じになるという。

 ボール教授の研究、そしてフランスのビジネススクール、欧州経営大学院(INSEAD)のアントニオ・ファタス、ハーバード大学のローレンス・サマーズ両氏による最近の共同研究で分かった重要なことの1つは、潜在産出額の推計値は実際の産出額の後を追いかけているということだ。これは「ヒステリシス(履歴効果、過去の経験がその後のパフォーマンスに影響を及ぼすこと)」が非常に強いことをうかがわせる発見だ。