(2015年11月10日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

中台首脳が歴史的会談、習主席「中台は一つの家族」

11月7日、シンガポールで首脳会談を行うに当たって握手を交わす中国の習近平国家主席(右)と台湾の馬英九総統〔AFPBB News

 「何物も我々を引き離すことはできない。我々は1つの家族だ」。台湾総統と握手を交わす最初の中国国家主席になった後、習近平氏はこう語った。

 習近平氏と馬英九氏との会談が歴史的なものだったことは間違いない。

 ただ、習近平氏から「家族」という言葉を聞いた時、筆者はハリウッド映画に出てくるマフィアのドンがやるようなこの言葉の使い方を思い出した。つまり、魅力と威嚇を混ぜ合わせた使い方である。

 実際、中国政府はまだ、台湾は反乱を起こしている省だと見なしており、もし独立を宣言するようなことがあれば、家族の一員を攻撃する権利があるとしている。

習近平主席の不安

 両義性はこれだけで終わらない。数十年に及ぶ排斥に終止符を打った習近平氏の決断は、見方によっては、自信に満ちた指導者ならではの行動だった。だが、この大胆な行動は恐らく、自信と同じくらい不安を反映したものでもある。なぜなら、近隣諸国を見渡せば、そこには数多くのトラブルが渦巻いていることが分かるからだ。

 台湾の政治は中国に逆らう方向に動いている。また中国政府は、南シナ海での領有権主張を巡って米国から強い圧力を受けている。トラブルは陸の上にもある。例えば、米国とその他11カ国は先日、環太平洋経済連携協定(TPP)という中国を排除した通商協定で合意し、アジア太平洋地域で中国が誇る中心的な地位に挑むことになった。

 一方、2014年に香港で勃発した民主派による抗議行動は本土に対する苦々しい思いを後に残し、中国政府の「一つの中国」政策に対する反発が香港と台湾で同時に発生する可能性が出てきた。

 おまけに、こうしたことはすべて、中国の国内景気が減速し、株式市場が乱高下し、かつ中国のエリート層が習近平氏の反腐敗運動にかなり動揺する中で生じている。