(2015年11月9日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

欧州で暗躍する自動車ロビー団体、VW不正で注目集まる

世界を唖然とさせたフォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正スキャンダルだが、最もおぞましいのは政府の振る舞いかもしれない・・・〔AFPBB News

 フォルクスワーゲン(VW)のスキャンダルにおいて最もおぞましい振る舞いは、同社ではなくドイツやその他欧州諸国の政府のそれかもしれない。各国政府はVWや他の自動車メーカーがもう目標を達成するために不正を働かなくて済むよう、規則の緩和を追求しているのだ。

 欧州連合(EU)は2017年に「実走行排ガス試験」を導入する。

 これは試験担当者が実験室での試験に依存するのではなく、運転中の自動車が出す排ガスを計測することを意味する。

 現状では、欧州で生産された多くの車がこうした現実世界での試験に合格することはあり得ない。規制当局者は行動を起こさねばならないことを自覚している――試験を簡単にすることで対応しようというわけだ。

 EU加盟国の技官らは先週開かれた会合で、ディーゼル車が公式に定められた窒素酸化物(NOx)の排出上限を最大で100%上回ることを認める新規制を採用した。加えて、EUの合意は寛大な移行期間を想定している。これは実に好都合だ。というのも現行モデルは平均して、許容レベルの7倍に上るNOxを排出しているからだ。

EUの遺伝子にまだ残る「生産者カルテル」

 こうした汚染物質は人の命を奪う。ディーゼルの排ガスに起因する推定死者数は交通事故の死者数を大きく上回る。だからEUの技術的な決定は、数千人の人を殺す決断と解釈することもできる。

 欧州議会にはまだ、この合意を否決するチャンスがある。筆者は先週、心底憤慨している欧州議会議員に会った。もっともこの議員も、過半数の議員が合意に反対票を投じるという確信は全くなかった。

 EUの原型となった欧州石炭鉄鋼共同体は生産者のカルテルとして創設され、そのカルテルは今なお現代のEUの遺伝子に組み込まれている。今回のエピソードが我々に教えてくれるのは、欧州単一市場で特定産業の狭い利益がその他すべてに勝る度合いだ。