(英エコノミスト誌 2015年11月7日号)

安倍晋三首相は最善を尽くしているが、この先の日本経済は、未知の領域に突入することになるだろう。

安倍首相が戦後70年談話を発表

多くの国の政府が安倍首相を注視している〔AFPBB News

 「世界には4種類の国がある」と、ノーベル賞を受賞した経済学者のサイモン・クズネッツは言ったとされている。その4種類とは、先進国、発展途上国、アルゼンチン、そして日本だ。

 だがいまや、先進国の多くは極めて日本的な様相を呈し、慢性的に低い金利とインフレ率、そして涙が出るほど大量の公的債務を抱えている。

 それゆえ、多くの国の政府は、日本の安倍晋三首相を注視している。経済再生を掲げて2012年に就任した安倍首相は、日本の経済的な混乱に立ち向かっているところだ。

 その任務は、多くの者が理解しているよりも難しい。求められているのは、単なる成長ではなく、膨大な公的債務に対処する力を日本に与えられるだけの急速な成長だ。

安倍首相が放った3本の矢

 安倍首相は、経済成長を推進する「3本の矢」――財政、金融、構造――により、歴代政権の中途半端な政策よりもずっと強力に景気を刺激すると公約した。今年9月には、さらに明確に最終目標を示し、過去20年の間、500兆円前後で推移している日本の名目国内総生産(GDP)を、20%増の600兆円に引き上げると表明した。

 安倍首相が放った矢は、経済を正しい方向に動かしてきた。インフレ調整前の成長率を示す名目GDPは、2012年末から約6%増加した。その増加のおよそ半分は、物価の上昇によるものだ。失業率も4.3%から3.4%に低下した。だが、この進歩は、まだ全く不十分だ。経済回復は停滞しており、第2四半期にはマイナス成長となった。物価は再び下落に転じている。

 そして、日銀が今夏ひねり出した新たな消費者物価指数、「新コア」CPIでさえ、目標とする2%の物価上昇率に届かないままだ。通常の金融政策への回帰は、相変わらず遠いように見える。日銀は10月30日、資産買い入れのペースを上げずに市場を失望させたが、それでも毎年80兆円の国債を購入している。インフレ率の低迷が続けば、その額はさらに増える可能性もある。