原発事故、元作業員が白血病 初の労災認定

東京電力福島第一原子力発電所で、防護服を着たまま路上で休憩する作業員〔AFPBB News

前回に引き続き、ベラルーシで行われた勉強会について述べる。

 勉強会は5日間にわたり、各国の原子力関係者によるプレゼンテーションや、チェルノブイリ原発事故で被害を受けた集落や避難地域の見学が行われた。福島第一原子力発電所事故に関する話が、世界各国の原子力関係者を驚かせていたことが印象的だった。

 まず、原子力災害の避難に関することだ。これまで、チェルノブイリ原発事故、スリーマイル島原発事故などの教訓を基に、原発事故後の対応は迅速な避難に重点が置かれていた。

 ところが、福島の経験を通じ、拙速な避難が高齢者を中心に健康被害を招くことが明らかになった。

跳ね上がった高齢者の死亡率

 例えば、元東京大学の野村周平氏らの研究によると、福島第一原発から20~30キロ以内にあった5つの老人施設からは328人の入所者が避難した。それから1年以内に75人が死亡し、死亡率は過去5年平均の2.7倍にも上った。

 原発事故直後は患者の移送先を見つけるだけで精一杯だった。移送中の環境は自衛隊の輸送車にベッドを4台詰めて運ぶ簡素なもので、十分な設備を用意する余裕はなかった。

 さらに、患者の正確な情報を移送先に伝えることができず、治療の継続に支障をきたした可能性もある。

 避難すると死亡率が上昇するかもしれない、というのは大きな衝撃だろう。日本から登壇した坪倉正治氏がこの教訓について言及した後、私は「では原子力災害後の避難はどうすればいいのか」という質問をスロバキアの原子力当局関係者から受けた。

 実際、原子力災害が起きた直後の不安定な状況下で、避難するか留まるべきか正確な判断を下すのは難しい。前回に述べたジャック・ロシャール氏も、「原発事故後の正しい避難行動は大変難しい課題だ」と述べていた。