押し寄せるTPPの波、「攻めの農業」は実現できるのか

日本農家の創意工夫の意欲を削ぎ落とすな

2015.11.06(Fri) 白田 茜
筆者プロフィール&コラム概要

 10月5日に大筋合意されたTPP(環太平洋パートナーシップ)。農林水産物は2328品目のうち81%の関税が撤廃される。対象から除くよう求められた「重要5品目」(コメ、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖)についても、約3割が関税撤廃される。

 政府は「攻めの農業」を繰り返すが、国内農業への影響は避けられそうにない。TPP大筋合意について国内の農家はどう考えているのか。意見を聞きながら必要な政策について考えてみたい。

ほとんどの関税が撤廃、または削減される

 TPP合意の内容は次の表を参照してほしい。「重要5項目」については、関税の引き下げや輸入枠の新設などの対応をとった。その他の主要農畜産品をみても、ほとんどの関税が撤廃となっていることが分かる。

「重要5品目」の現行とTPP発行後の各関税状況(参考:内閣官房TPP政府対策本部「TPP協定の概要」をもとに筆者作成
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主要農畜産品の現行とTPP発行後の各関税状況。オレンジについては、ミカンの旬12~3月に輸入量が急増した場合、関税率を上げる(農林水産省発表資料およびインターネット各種情報をもとに筆者作成)
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 オレンジとリンゴについては、これまでも輸入数量制限廃止など自由化が進められており、外国産果汁の輸入量が急増した。結果、国産果汁の生産量は大幅に減少している。

 協定の結果を見て、国内の果汁生産団体は「果汁の農業者への影響は避けられない。収益力強化のため、生産団地造成などに取り組んでいかなければならない」と述べる。

 政府は10月29日、国産のコメや麦、野菜、果物など21品目への影響について分析結果を発表した。

 主食用のコメの関税率や、国が義務的に輸入するミニマム・アクセス(MA)など輸入の枠組みは変わらない。ただ、米国と豪州から年間計7万8400トンの輸入枠が新たに設けられる。輸入が増える分、国産コメ価格が下落する可能性があるため、国は備蓄用として毎年買い入れているコメの量を増やすことで影響を抑えることを検討しているという。

 小麦と大麦は、国が一元的に輸入する制度を維持するものの、「マークアップ」(国が輸入する際に徴収している差益)を9年目までに45%削減するため、政府は国産小麦の価格に影響を及ぼす懸念もあるとしている。小麦の輸入は、製粉メーカーに売り渡される際に、政府が買い付けた価格に政府が管理する経費と国内の生産振興に充てる費用が上乗せされていた。

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1978年佐賀県生まれ。佐賀県庁で食品のブランド化に関わる。その後、大学院で農業政策や食品安全に関するリスクコミュニケーションを学ぶ。食品コンサルタント会社を経て、現在は社会的関心が高い科学ニュースについて専門家のコメントを収集しジャーナリストに提供する活動をしている。関心のあるテーマは、農業、食品流通、食品安全、リスクコミュニケーション。


農業の進む道

就業者の高齢化と減少、国際競争力の欠如など、様々な問題を抱える日本の農業。農業改革が遅々として進まないのはなぜか。農業を覆う問題の構造を明らかにし、あらゆる方面から日本の農業を活性化する方策を探る。