米中海軍トップがテレビ会談、南シナ海めぐる緊張の中

米韓両軍の年次合同軍事演習「フォール・イーグル」に参加する米海軍のイージス駆逐艦「ラッセン」(手前、2015年3月12日撮影、資料写真)〔AFPBB News

 米国のバラク・オバマ大統領は、中国の南シナ海人工島建設問題でようやく「航行の自由作戦」(FONOP: Freedom of Navigation Operation)の実施を決断した。

 大統領の決断に従い、米海軍のイージス艦ラッセンは、10月27日、中国が建設した人工島周辺12カイリ内を航行した。この航行自体は海洋法上認められている自由航行権の行使であり、国際法上も全く問題のない行動であるが、中国側は激しく反発している。

 そもそも根拠の全くない九段線に依拠した南シナ海における領有権の主張は論理的に破綻しているし、人工島周辺12カイリを自らの領海であるとの主張についても海洋法上否定されている。

 米海軍の作戦は極めて妥当なものであるが、これに対して中国が今後さらに軍事的に反発をエスカレートさせていくか否かが注目される。

 バラク・オバマ大統領がFONOPを決断する際には、国防省などが様々なシナリオを列挙し、数多くのシミュレーションを繰り返し、最悪のシナリオにも対処できることを確認して決断しているはずである。

 米国の国防省が実施したシミュレーションをうかがい知ることはできないが、「米国と中国がもしも南シナ海で紛争状態になったら、どちらが有利であるか?」を知りたくなる。

 この素朴な疑問に対して答えてくれるのが、ランド研究所(RAND Corporation)が最近発表した「米中軍事スコアカード」(“The U.S. - CHINA Military Scorecard”)という報告書である。

 この「米中軍事スコアカード」は400ページを超える労作である。我が国にとっても南西諸島の防衛を考える際に数多くの示唆を与えてくれる貴重な研究である。

 この大作については日本でも一部紹介されてはいるが、孫引きのような紹介で直接この大作を読み込んだとは思えない文章である。本稿においては、直接この大作を読み理解し、そのエキスを紹介したいと思う。