(2015年10月29日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

外交的には成功のAIIB、問われる中国の運営能力

中国は、自分たちの時代が到来しつつあるというメッセージを世界に送っている(写真は中国・北京の人民大会堂にはためく中国国旗)〔AFPBB News

 無限の可能性を秘めたこの宇宙のどこかには、ジンバブエを何十年も(大抵はむちゃくちゃに)支配してきたロバート・ムガベ氏にノーベル平和賞が授与される惑星があるのかもしれない。だが、この地球では、ムガベ氏は中国版の「同等品」、つまり香港のとある団体が設けた「孔子平和賞」なるもので満足するしかない。

 「アンチノーベル平和賞」とも言われるこの賞の選考委員会は、91歳のムガベ氏の建国の取り組みと汎アフリカ主義への貢献を称えて授賞を決めた。

 同賞は5年前、中国の民主化推進を支持する反体制派で現在獄中にある劉暁波(リウ・シャオボー)氏にノーベル平和賞が授与された際、これに対抗する形で急遽設けられたものだ。

 過去にはロシアのウラジーミル・プーチン大統領やキューバのフィデル・カストロ元議長などが受賞している。今回ムガベ氏が選ばれたことにより、西側の価値観への敵意をむき出しにした賞だという評価はさらに強固なものとなる。

中国が語る物語

 この賞は大きな流れの中の小さな、そしていささか奇妙な一例にすぎない。中国共産党はゆっくりとではあるが確実に、西側中心の世界観に匹敵するナラティブ(物語)を構築しようとしている。過去100年間は、民主主義や個人の自律、法の支配といった米国の概念が普遍的と見なされる時代がほとんどだったが、中国はこれに異議を申し立て始めているのだ。

 この国の考え方は、大陸並みの広さを持つ国家を維持してきた数千年間に吸収されたものであり、安定と強い政府に重きを置きがちだ。中国政府にとって過去30年間の歩みは、人々の福祉の実現においては民主主義よりも物質的な進歩と有能な指導者群の方が重要だということの証明にほかならない。

 中国政府は自らの物語を語る手段を着実に積み上げている。国営放送局の中国中央テレビ(CCTV)は2011年から英語放送を大幅に拡充し始め、世界各地に70の支局を開設した。また中国教育省の関連団体で、中国の言語や文化を普及させるために作られた孔子学院は2004年以降、数十カ国で何百もの教室を開いて急成長を遂げている。