(2015年10月28日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

独メルケル政権、米情報活動に協力?報道受けて風当たり強まる

欧州最強の指導者の座を固めたドイツのアンゲラ・メルケル首相(右)。難民危機への対応が命取りになる可能性が出てきた〔AFPBB News

 支持者から深く慕われるのが普通であるだけに、ドイツ東部の町シュクロイディッツで先日開かれた地方党大会はアンゲラ・メルケル首相にとってまさに衝撃的だった。

 メルケル氏の率いる保守政党・キリスト教民主同盟(CDU)の党員たちが、難民に「門戸を開く」同氏の政策をこれ以上ない厳しい言葉で非難したのだ。

 「どんな人が来るのか分からない」。集まった忠実な支持者1000人の前である代議員が発言した。「何人来るのかも分からない。すでに何人来ているのかも分からない」

 メルケル氏のリーダーシップを批判する参加者もいた。ある代議員は次のように言い切った。「『あんな首相はもう支持できない』と私に言ってくる市民がますます増えている」

 一方、メルケル氏が「これは私が首相として直面する最も大きな課題である。状況が厳しいことは承知しているが、私はあきらめない」と語り、「難民歓迎」の方針を貫くと誓うのを耳にして喝采を送る人もいた。

 しかし、シュクロイディッツで見た風景のうち脳裏にこびりついて離れなかったのは、次のような文句が書かれたプラカードだった。「難民による混乱を止めよ、メルケルは退陣せよ」

欧州最強の指導者に前例のない逆風

 欧州最強の指導者にそんな侮蔑の言葉が投げかけられたという話は、これまで聞いたことがない。だが同時に、この難民危機自体も過去に例のない規模になっている。

 問題を小さく切り分けることで知られるメルケル氏は、自身にとって最大の難問に真正面から取り組んでいるが、事態を収拾できるかどうかは誰にも分からない。何しろ、押し寄せてくる亡命申請者の数は1日当たりで最大1万人に達しており、その合計は昨年の実績の5倍超に当たる100万人の大台をも突破しそうなのだ。流入は2016年になっても続くだろう。

 メルケル氏から見れば、最近行われたほかの地方党大会はシュクロイディッツのそれよりもはるかに順調に進んでいた。しかし、難民の流入ペースを遅くしたり、党内で強まる反対論を抑え込んだり、加速する支持率の低下を食い止めて反転上昇させたりする時間はあまりない。