9月21日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)は、金融政策の変更は行わなかったものの、「FOMCは必要があれば、追加的な金融緩和を行う用意がある」という文章が、声明文に新たに盛り込まれた。8月10日の前回声明文よりも踏み込んだ表現であり、しかも声明文の他の部分では、足元のインフレ率が望ましい水準をやや下回っており、最大雇用と物価安定という米連邦準備理事会(FRB)の責務に沿っていないことが、繰り返し強調されている。これらを総合して考えると、バーナンキ議長は今後出てくる米経済指標、特に物価関連と雇用関連の数字を十分見極めた上で、それらが弱いものにとどまり、追加緩和の「必要がある」という点でFOMC内の多数派形成ができると判断した場合には、おそらく米国債の追加買い入れという形で追加緩和に動く腹積もりなのではないかと推測される。

 もっとも、追加緩和の必要性を巡ってはFOMC内で現在、意見が大きく割れているようである。FOMCで議論が行われた末に、そうした点が間接的に反映されたのか、今回の声明文に明記された追加緩和の用意があるという文章は、表面的には、一般論の範疇にとどめられている。また、FRBのバランスシートにも言及しておらず、具体的な追加緩和手段の示唆に踏み込んでいることもない。

 FOMC内の意見が今後、追加緩和が必要という方向でしっかり収斂していくためには、雇用統計で民間雇用の増加幅が拡大してこない、あるいはコアPCE(個人消費支出)デフレーターの前年同月比がプラス幅を縮小してくるといった、景気回復力の欠如・物価下振れリスクの増大を明確に示すエビデンスが必要と考えられる。ただし、この点について判断がなされるのはFOMCにおいてであり、厳密なハードルが設定されているわけでもない。

 したがって、追加緩和のハードルがどの程度高いのかは判然としない。現時点では、11月および12月のFOMCにおける追加緩和の可能性については、五分五分としか言いようがない。バーナンキ議長をはじめとするFOMCメンバーの今後の発言から、FOMC内の雰囲気の変化を探っていくことになる。

 今回の票決は8対1で、反対したのは今回もカンザスシティー連銀ホーニグ総裁のみだった。同総裁はこれで6回連続で反対票を投じたことになり、定例会合での反対票連続投票としては1955年以降の最長に並んだ(ブルームバーグ)。

 以下、前回8月10日分と今回9月21日分について、声明文の主要変更点を確認しておきたい。

【景気全体・労働市場】 ~ 前回と同じ、減速したという状況認識

(前回8月10日声明文)

◇「6月FOMC以降に入手された情報は、生産と雇用の回復ペースがここ数カ月、減速したことを示唆している
(Information received since the Federal Open Market Committee met in June indicates that the pace of recovery in output and employment has slowed in recent months.)

(今回9月21日声明文)

◆「8月FOMC以降に入手された情報は、生産と雇用の回復ペースがここ数カ月、減速したことを示唆している
(Information received since the Federal Open Market Committee met in August indicates that the pace of recovery in output and employment has slowed in recent months.)