(英エコノミスト誌 2015年10月24日号)

ピボットができる国は米国だけではない。

訪英の中国国家主席、女王の晩さん会に出席 周辺では抗議活動も

10月20日、英ロンドンで、バッキンガム宮殿での公式晩さん会に馬車で向かうエリザベス女王と中国の習近平国家主席〔AFPBB News

 中国の国家主席は、過去2代の前任者が1999年と2005年に国賓待遇で英国を公式訪問しているが、どちらの時も、先日の習近平主席の訪英時のように熱のこもった歓迎を受けたわけではなかった。

 バッキンガム宮殿やロンドンの金融街シティのギルドホールで開かれた通常の華やかな式典の数々や公式晩餐会にとどまらず、習主席の4日間の滞在日程には、大学からサッカーチーム、ロンドンからマンチェスターまで、あきれるほど多種多様な場所への公式訪問が詰めこまれていた。

 習主席はまた、英国議会の上下両院の議員を前に演説をした。これは、ごく少数の要人だけに与えられる特権だ。

前代未聞の手厚い待遇

 訪英した国家元首がこれほどの扱いを受けたことはこれまでほとんどなかったが、それを言うなら、英国政府が1つの国との関係にこれほど多くのものを託したことも、これまでほとんどなかった。

 米国をはじめ、西側諸国の多くはいまだに中国とは距離を置く方針を取っている。世界2位の経済大国との貿易には前向きだが、それ以外の点ではあまり接近しようとしていない。それに対して、英国は中国を積極的に受け入れ、英中関係の「黄金時代」の始まりを歓迎している。

 習主席の訪英中、両国は数々の合意事項を発表した。その狙いは、英国を西側における中国の主要な対話者として位置づけることにある。これにより、英国の外交政策に新たに重要な一面が加わった。

 「これは長期的な戦略的決断だ」。シンクタンクの英王立国際問題研究所(チャタムハウス)のロビン・ニブレット所長はこう語る。万事うまくいけば、英国は間違いなく利益を得るだろう。

 だが、そうした利益が、英国のアジアへの「ピボット(旋回)」が同盟国の間で引き起こした懐疑的な見方――さらには敵意――をしのぐには、相当に大きなものでなければならないことはすでに明らかだ。ピボット支持者の筆頭であるジョージ・オズボーン財務相でさえ、ピボットは「リスク」だと発言している。