(英エコノミスト誌 2015年10月10日号)

今年のノーベル賞は、2つの抗寄生虫薬の考案者、細胞のDNA修復機能の発見者、ニュートリノに質量があることを示した研究者に授与された。

ノーベル医学生理学賞、大村智氏ら3氏に 感染症の新治療法発見

AFPBB News

 科学的進歩におごると、1世紀半足らず前にはほとんどの薬が植物性の生薬だったことを人は簡単に忘れてしまう。今日でも、アスピリンやモルヒネ、ジギタリスといった最もよく知られた薬の一部は、植物から作られているか、植物由来の分子に基づいている。

 このため、最新のマラリア治療薬である「アーテミシニン」が、2000年を優に超える間、中国でその目的のために使われてきた植物に由来しているという事実は驚くことではないはずだ。

人類救う抗寄生虫薬

 アーテミシニンの発見者、屠呦呦(トゥ・ヨウヨウ)氏が参考にした最も古い処方箋は、紀元前340年に葛洪(ガ・ホン)によって書かれた緊急時の処方箋ハンドブック「肘後備急方」だった。この文献は、薬草の有効成分を抽出する方法について屠氏に有益なヒントを与えた。

 アーテミシニンは、2000年以降のマラリアによる死者数の半減に極めて重要な役割を担った。そのため屠氏は、今年のノーベル生理学・医学賞を分かち合う、称賛に値する受賞者だ。

 屠氏は、もともとベトナム戦争中に北ベトナムの兵士をマラリア感染から守ることを目的とする中国の極秘プロジェクトで思いついたアイデアを取り入れ、研究をさらに推進。マラリアを引き起こす寄生虫の薬剤耐性が進化したために既存薬が次第に効果を失いつつあった分野の救世主になった。

 生理学・医学賞の残る受賞者である米国のウィリアム・キャンベル氏と日本の大村智氏は、特定の寄生虫に対して採用されるもう1つの薬「アベルメクチン」の発見で賞を分かち合う。

 アベルメクチンも生物に由来している。ストレプトマイセスと呼ばれる細菌がそれで、大村博士は1970年代にその菌株を何千と育てた。同氏は、ストレプトマイセスが初期の抗生物質であるストレプトマイシンを生産しているという事実に触発され、潜在的な薬を探し求めた。

 キャンベル博士はこの仕事を引き継ぎ、大村氏が発見した化合物の1つで幸運に恵まれ、これがフィラリア症や河川盲目症を引き起こす線虫を撃退することを発見した。アベルメクチンの化学誘導体であるイベルメクチンは現在、非常に重要だと考えられているため、最も基礎的な医療制度でさえ必要とする医薬品を列記した世界保健機関(WHO)の「必須医薬品リスト」に掲載されている。