(2015年10月13日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

デル、中国市場向けに低価格PCを発表 - 中国

思い切った大型買収に打って出るマイケル・デル氏(左)〔AFPBB News

 自らの名前を冠したパソコンメーカーにMBO(経営陣参加の企業買収)を行って株式を非公開化した2013年以降、マイケル・デル氏はウォール街のアクティビスト(物言う株主)やフィナンシャルエンジニアのやり方にほとんど敬意を表していない。

 公開市場の投資家たちは、長期的には企業価値を高めるかもしれないが、その間は利益を押し下げる事業建て直しの取り組みを支持したがらない、と同氏は述べている。

 しかし、ストレージ(外部記憶装置)大手EMCを637億ドルで買収するという提案がもし成功すれば、デル氏はハイテク業界史上最も大胆な部類に入るフィナンシャルエンジニアリングを見事にやってのけたことになる。デル氏はこれで、多額の債務と、少なくとも上場企業3社の経営権を手にすることになる。

 そして、1つ、意外な展開がある。デル氏は業界史上最大の買収案件を成功させるために、この計画に詳しい人物が「裏口IPO(新規株式公開)」と呼ぶ手法を通じて自分の会社全体を再上場することを提案しているのだ。

型破りなフィナンシャルエンジニアリング

 EMCの事業の巨大さ、そして「フェデレーション(連合)」と称されるグループ企業とのつながりの緩やかさゆえに、デル氏はそんな型破りなフィナンシャルエンジニアリングの手法を検討せざるを得なくなったが、そうでなければ得られなかったようなチャンスも手にした。

 EMC買収には470億ドルの現金が必要になり、デル氏は400億ドルを超える借入枠を銀行に設定している。また、この買収の条件に詳しいある人物によれば、デル氏はプライベートエクイティファンドのシルバーレイクやシンガポールの投資会社テマセク(いずれも2年前のデルのMBOを後押しした)とともに、今回の買収支援のために合計で約40億ドルの出資を行う。買収後のデル氏の出資比率は約70%で、現在のデルでのそれと変わらないという。

 独立系の株式アナリスト、パトリック・ムーアヘッド氏によれば、大企業が自前のデータセンターで稼働させるシステムの販売というEMCの成熟したストレージ事業から生み出される現金は、向こう3~5年間の債務返済に貢献するのに十分な規模になるという。