(2015年10月12日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

VW排ガス不正、2007年に違法性指摘 独報道

独ヴォルフスブルクにあるフォルクスワーゲン(VW)本社前で行われた国際環境保護団体グリーンピースの抗議デモで、「うそをつくのをやめろ」と書かれたプラカードを掲げる活動家〔AFPBB News

 ドイツのヴォルフスブルクほど、1社の企業に大きく依存する都市はほとんどない。ベルリンの西200キロに位置するこの街は、世界最大の自動車工場とフォルクスワーゲン(VW)本社の所在地であるだけではない。サッカーの欧州チャンピオンズリーグの試合が開催されるVWアレーナや、VW銀行、さらには受賞歴のあるカレーソーセージを作るVW精肉店まである。

 「ここではVWは神様ですよ」。市内の主要繁華街、ポルシェ通りでパン屋を営むトルコ人店主はこう語る。

 だが、ディーゼルの排ガスを巡るVWのスキャンダルのニュースは街に大きな打撃を与え、怒りや落胆、そしてVWとヴォルフスブルク双方にとっての経済、雇用面の悪影響への不安に火をつけている。一部には、別の自動車の街の衰退を引き合いに出す人さえいる。米国のデトロイトだ。

 「心配していますよ。これはヴォルフスブルクにとって良くないことです。デトロイトは、何が起こり得るかを示す負の事例になっている。市が破綻したわけですから。ここでも同じことが考えられる」。ヴォルフスブルクで生まれ育ち、現在、医療保険会社に勤めているウーヴァ・ベンドルフさんはこう話す。

街中で聞かれる怒りと不安の声

 VWの広大な工場は、住民わずか12万人の市で約7万2000人を雇用している。工場は6平方キロ以上に及ぶ敷地――モナコ公国の3倍の面積――で、VWの「ゴルフ」や「ティグアン」「トゥーラン」など、年間84万台の自動車を生産している。

 従業員の間では、今回のスキャンダルは、まるでヴォルフスブルクにそびえるVWの工場発電所の煙突群のように、長い影を落としている。

 「最初はショック。そして次に怒りが沸いた。連中はどうしてあんなに馬鹿なことができたのか」。ある従業員は、先月、VWが有害な窒素酸化物(NOx)排出に関するディーゼル車の試験で大規模な不正を働いたことを認めたと聞いた時に抱いた感情を、こう表現する。

 別の従業員は「みんな心配している。まだボーナスはもらえるのか。人員削減はあるのか。不確実なことがあまりに多い」と言う。