(英エコノミスト誌 2015年10月10日号)

TPPが大筋合意に達したが、参加予定国での批准はすんなりいかない可能性がある (c) Can Stock Photo

交渉担当者らは野心的な貿易協定について合意に至ったが、すでに批准に対する抵抗は激しい。

 米大統領選に出馬しているドナルド・トランプ氏は、この協定を「ひどい合意だ」と非難した。同じく大統領選に立候補したヒラリー・クリントン氏も、貿易協定に要求されるべき「高いハードル」を満たしていないと考えている。

 だが、米国や日本を含むアジアおよび南北アメリカ大陸の12カ国を網羅するこの環太平洋経済連携協定(TPP)の支持派は、この20年間で最大規模の多国間貿易協定だと評価し、国際貿易の「交通規則を規定」するものだと胸を張っている。いったいどちらが真相なのだろうか?

 TPPの適用範囲には、世界経済の40%が含まれる。米国の輸出企業だけをとっても、1万8000項目に上る個別関税がゼロになる。交渉に参加した他の11カ国の企業についても、ほぼ同じことが当てはまる。

 通常であれば最も堅く守られている農産物に関する障壁も、撤廃に向けての動きが始まることになった。これにより国外の業者にも、例えばカナダの乳製品市場に進出する足がかりをつかんだり、日本の牛肉市場でより多くのシェアを得たりすることが可能になる。

 ただし、こうした規制撤廃の一部は、残念なまでにゆっくりとしたペースで段階的に導入される。日本製トラックに対する米国の関税は、今後30年にわたって残る計画だ。

TPPの肝は関税削減に非ず

 とはいえ、この地域で課されている関税は、そもそもあまり高くない。それよりも重要なのは、サービス分野における貿易の自由化を目指すTPPの取り組みだ。サービス分野には通常、例えば農産物や自動車などの輸入と同様の障壁はない。その代わり、通関手続きやビザ、免許などの国境をまたぐ際の規則に絡む複雑な問題を抱えている。

 TPPは、より多くのサービス事業者が各国市場に今以上にアクセスできるようにするとうたっている。こうしたことは、徐々に生産性の向上につながるはずだ。