ブラジル・サルバドールのイエマンジャの祭り。海岸に集まる人の数は50万人とも言われる(筆者撮影、以下同)

 アフリカ大陸と南米大陸を切り取ってくっつけてみると、凹凸がぴたりと噛み合う場所がある。ヴェーゲナー(注)のロマンだ。

(注:アルフレート・ヴェーゲナー、1880~1930年。大陸移動説を提唱したドイツの気象学者)

 旅しているときはそんなロマンは忘れている。目の前のバスに乗りこんで、目の前の道を進むだけで精いっぱいで、来し方行く末を考える機会なんてそんなにない。それはそれでいい。

 私はアフリカを回った後、大陸を切り離した大西洋を渡って中南米を旅していた。ラテンの人びとに紛れて酒を飲んでいると、アフリカのことを思い出すこともそうそうなかった。ずっと酔っぱらって旅していたような気もする。酔っぱらいながらブラジルに着くと、東海岸の街、サルバドールで海辺のお祭りに行った。2月2日の、通称「イエマンジャの祭り」。

 海のにおいの紛れたビール缶は砂だらけで、プルを引っ張って唇をざらつかせながら飲む薄いビールの向こうに、青い海があった。白と青の衣装で統一された黒人系ブラジル人が、太鼓のリズムに合わせて踊っている。