最初にお断りしておく。私は英語が下手である。お世辞にも流暢とは言えない。海外に出ると今さらながら自分の英語力に落胆する。英語とはかれこれ30年以上の付き合いだが、40歳前後をピークに会話力は下がる一方である。私は英語の流暢な方が羨ましい。

 ただし、英語が流暢な方々も気をつけねばならないことがある。

 それは自分の英語が、ビジネスやその他重要な意思決定に参加でき、貢献できるレベルかどうか、という点だ。

 私が東京オフィスの代表取締役社長を務めるスタントンチェイスは、46カ国70オフィスからなっており、その世界会議はまさに人種のるつぼである。さまざまなシチュエーションで相応の英語力が試される。

 例えば、こんなシビアなシチュエーションがあった。弊社の各オフィスに対するフランチャイズフィーが、各国の経済力をGDPを含む要素で再分析され、改定されるという。東京オフィスの引き上げ率は先進国の中でも最も著しかった。

 ボードメンバーを相手にしてどういう反論ができるか? そのロジックに客観性はあるか? Unfairと言えるレベルまで議論を持ち込めるか? こうした利害関係の中で、自国の利益を主張して何らかのものを勝ち取ることは非常に難しい。

 内容がなければ、いくら英語が流暢でも人は耳を貸さないことは言うまでもない。しかしながら、内容があるのに、伝える技術が乏しいことが問題なのだ。特に日本人はこの傾向が強い。失礼ながら、ほとんどの方が、自分が思っているよりも英語が下手なのである。

 考えてみれば、ビジネスとは、ある価値や品質を顧客に提供し、その対価を得るという活動である。どんなに良いものでも、タイムリーにデリバリー(提供)されないと意味がない。稟議を通す、顧客へ提案する、あるプロジェクトをスタートさせる等、さまざまなビジネスシーンで多用されるデリバリー形態は「英語でのプレゼン」だろう。

 これには万国共通と思われる「お作法」がある。このことについて、普段私が気をつけている10箇条を紹介したい。