(英エコノミスト誌 2015年10月2日号)

米国経済の覇権が弱まっていく中、ドルの優位性は維持不能に見える。

ドルの優位性は揺るがないが、その支配の基盤は脆い (c) Can Stock Photo

 覇権を有する者が何かの役に立つとすれば、それは、支配するシステムに安定性を与えられることだろう。ドルは70年にわたり、金融および通貨システムにおける超大国だった。

 人民元の台頭が話題に上ってはいるものの、ドルの優位性は揺るがない。

 決済、価値の保存、あるいは準備資金としてのドルに匹敵する通貨は存在しない。

 しかし、ドルによる支配の基盤は脆く、それが支えるシステムは不安定だ。さらに悪いことに、ドルの代わりとなる準備通貨候補には欠陥がある。より安全な秩序への移行は、恐ろしく困難なものになるだろう。

ドルが止まる時

 過去数十年の間、米国の経済力は、ドルの支配的な立場に正当な根拠を与えていた。だが、本誌(英エコノミスト)が今週号の特集でも触れているように、米国の経済的影響力と金融上の力との間に断層が生まれている。

 米国が世界のGDP(国内総生産)に占める割合は23%、財の貿易に占める割合は12%だ。だが、全世界の生産高の約60%と世界人口の約60%は、ドルペッグ制を採用しているか、自国通貨をなんらかの形でドルに連動させている、事実上のドル圏に集中している。

 世界の企業投資のストックに占める米国企業の割合は、1999年には39%だったが、今では24%に減少している。だが、現在のウォール街は、過去に例がないほど世界の市場のリズムを左右している。米国の資産運用管理会社が運用する資産は、世界の運用資産の55%に上り、10年前の44%から増加している。

 米国の経済力と金融力のギャップの拡大は、ドル圏内の国にも圏外の国にも、いくつかの問題を生んでいる。その原因は、ドル支配体制のコストが、それがもたらす利益に勝り始めていることにある。