(英エコノミスト誌 2015年9月26日号)

世界最大の自動車メーカーによる組織的な不正行為は業界全体を巻き込む恐れがある。場合によっては業界を作り変える可能性も秘めている。

独VW、排ガス規制回避するソフト搭載 米当局が捜査

排ガス規制逃れで大揺れするフォルクスワーゲン(VW)。一大スキャンダルは同社のみならず、業界全体をのみ込む可能性がある〔AFPBB News

 1960年代のディズニー映画に登場した、自分の意思を持つフォルクスワーゲン(VW)のビートル「ハービー」も、それなりに不運な出来事に遭遇していた。だがそんな災難は、ハービーにとっても、ハービーに乗る人たちにとってもハッピーエンドで終わるのが普通だった。

 自社の車を賢くしようとしたVWの最近の試みは、事態を極めて厳しい方向に向かわせている。

 ディーゼルエンジン車から出される排ガスを測定する米国の規制当局を欺くために、秘密のソフトウエアを使用したことが、VWを危機に陥れている。

 そして、今回の事件はさらなる調査を誘発し、排ガスと燃費に関するさまざまな主張は疑問視される可能性が高くなるだろう。そのため今回のスキャンダルは、業界の大部分にとって打撃となる可能性がある――業界を作り変えるほど大きなものになるかもしれない。

VWとドイツが負った傷

 世界最大の自動車メーカー、VWが負ったダメージは破壊的だ。同社の株価は今回の不正行為が表面化してから30%以上急落している(図1参照)。同社は、数十億ドルの罰金、その他の制裁金に直面している。訴訟も、ヴォルスブルクの本社に次々舞い込むだろう。重要な米国市場のために同社が取った戦略は、台無しになった。その評判はズタズタだ。

 VW社長のマルティン・ヴィンターコーン氏(人を欺く「無効化」ソフトが最初に登場した2009年に同社の研究開発についても直接責任を負っていた人物)は、9月23日に辞任した。

 VWの母国は衝撃を受けている。ドイツのバーバラ・ヘンドリクス環境相は、「驚きを通り越している」と表明し、多くの人の気持ちを代弁した。

 もっとも野党の「緑の党」は、今年の国会質疑への対応で、「政府は、排ガスのデータを操作することが技術的に可能であることを知っていると認めた」と話している。

 こうした反応に混在しているのが、国際サッカー連盟(FIFA)とワールドカップを巡るスキャンダルと同様に、欧州の人間が破ってきたルールの執行が米国の肩にかかっているという若干の決まり悪さだ。