(2015年9月25日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 

英国の「中国へのピボット」は経済ばかりを見ている (c) Can Stock Photo

 ここに問題がある。自国のことを米国の最も信頼できる軍事同盟国と見なす国が、西側における中国の特別な友人にもなれるのか? 英国のジョージ・オズボーン財務相に聞けば、その答えは明快な「イエス」だ。ほかの人――ホワイトハウスやホワイトホール(英国政府)の人々――は別の見方をしている。

 オズボーン氏は中国各地を巡り、北京の中央政府の権威が先住民のウイグル族に挑まれている、問題を抱えた新疆ウイグル自治区も訪れた。

 財務相は商業契約に署名していない時には、あらゆる手を尽くして物議を避けた。オズボーン氏の狙いは、中国の習近平国家主席が10月に英国を公式訪問する際に、金融、投資に関する一連の合意文書に調印するお膳立てをすることだった。

 オズボーン氏は、習氏が中国の資金をイングランド南部の新しい原子力発電所に投じたら、20億ポンドの納税者の支援を保証すると約束した。また、同氏は英国を中国独自の原子力技術の試験台として差し出した。

 ホワイトホールの関係者は、原発プロジェクトはシェールオイルとシェールガス、そしてエネルギー利用のパターンの変化によって経済性を失ったと考えている。オズボーン氏はそうした見方を一切認めない。

財務省が外交政策の方向性を定める異例の事態

 オズボーン氏が北京、上海、ウルムチを巡り、英国を西側における中国の「最高のパートナー」として売り込んでいる頃、ロンドンにいる安全保障の担当者らは新しい安保戦略を策定していた。その最重要項目は、ワシントンとの安保・軍事同盟の再確認になる。

 英国のデビッド・キャメロン首相は今年、英国の防衛予算削減計画に対する米国の批判にさらされ、ひどく動揺した。国内総生産(GDP)比2%という北大西洋条約機構(NATO)の防衛費目標を復活させた今、首相は英国がまだ十分な軍事力を発揮できることを示したいと思っている。シリアのイスラム過激派テロリストに対する英国の空爆を禁じる議会の規則を覆そうとする努力の背後にも同じ考えがある。

 偶然にも、防衛見直しは、サイバー攻撃に対抗する英国の能力の大幅な増強にも触れる。こうしたサイバー攻撃の多くは――読者が推測するように――中国から仕掛けられている。