(2015年9月22日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

国民の高齢化に伴い、コメの消費量が大きく減少している (c) Can Stock Photo

 「NP-WU10」という製品の釜は、熱が全体に均一に伝わるように鋳物工場で手作りされている。ふたはプラチナを配合した材料でコーティングされており、アミノ酸のレベルが完璧な水準になるようにしてある。また、この製品はデジタルセンサーも装備しており、完璧な炊きあがりになるまで121通りの微調整が可能だ。

 つやつやしたジャポニカ米を食べたり宗教的行事の捧げ物にしたりしているうえに、コメの生産が政治的な聖域にもなっている。

 そのようにコメを崇拝する国にとって、1500ドルもする象印マホービン製の炊飯器は最も重要な祭壇である。いや、少なくともそうであるはずだ。

 だが、大阪に本社を構え、この炊飯器NP-WU10の開発にエンジニアやデザイナー、試食担当者を何年も取り組ませてきた象印は、大きな問題に直面している。日本のコメの消費量が減っているのだ。それも大幅に――。

高齢化し縮む胃袋、食生活の変化で日本酒や魚の消費量も減少

 日本のコメ危機は、国民が年齢を重ねて胃が小さくなったことから始まっている。つまり、高齢化に伴って食欲が衰えているのだ。若い世代が小麦を好むことも手伝って、日本で食されるコメの量は20年前より約20%少なくなっている。

 コメの需要はほかの分野でも消滅しつつある。今日の日本人が飲む(コメを原料とした)日本酒の量は1970年の3分の1に過ぎず、昔からコメと一緒に食べられてきた魚の消費量も2005年以降で30%減っている。困った農林水産省は、この穀物――日本名は「ごはん」で「食事」を意味する――を売り込む方法を探さざるを得なくなっている。

 同省でコメを担当している部署の広報担当者によれば、日本国民1人当たりの摂取熱量(1日当たり)は2006年に2670キロカロリーでピークを迎えてから減少傾向にあり、昨年は2415キロカロリーにとどまっている。

 「この差が生じたのは、国民が高齢化していて食が細くなっているからだ」とこの担当者は言う。「2670キロカロリーというピークは、日本人が食べる量の限界だったと私は思う」