(英エコノミスト誌 2015年9月19日号)

かつて活力に満ちていた経済の縮小は、統計に携わる人たちだけでなく、一般庶民にも衝撃を与えている。

ブラジル全土で反大統領デモ、「190万人参加」

ブラジルでは、景気後退や汚職問題でジルマ・ルセフ大統領や与党労働党に抗議し、大統領の辞任を求めるデモが折に触れて行われている〔AFPBB News

 職業安定所は、おおよそ陽気な場所ではない。国の生活の大部分を円滑に動かしている個人的なコネがない人々にとって、職業安定所がしばしば最後の砦となるブラジルでは、特に暗澹とすることがある。

 中心街のサンパウロにある職業安定所で列に並ぶ54歳の運転手、フランシスコさんは、2年以上も失業している。

 列がこんなに長かったことはない、とフランシスコさんはため息をつく。「危機のせいだよ」

 ブラジルの成長は何年も停滞している。ジルマ・ルセフ大統領の任期1期目の2011年から2014年にかけては、成長率が平均で2%だった。ブラジルの大豆、鉄鉱石、石油に対する世界的な需要が急拡大していたにもかかわらず、だ。

 民間部門に対する政府の干渉は、過度に緩和的な金融・財政政策と相まって、信頼感を低下させた。投資は干上がり、インフレは高進した。高いコモディティー(商品)価格の支えがなくなった今、国内総生産(GDP)が大きく落ち込み(2015年第2四半期は前期比1.9%減)、それまで底堅かった労働市場を道連れにしている。

跳ね上がる失業率

 今年1月以降、50万人近い雇用が削減された。ビジネススクールのファンダサウン・ゲットゥーリオ・ヴァルガスの研究者たちは、2016年末までにさらに250万人の雇用が削減されると見ている。7月の失業率は7.5%で、1年前の4.9%から跳ね上がり、史上最大の年間上昇率を記録した(図1参照)。

 失業率は来年末には約10%に達し、その後しばらく、その水準にとどまると予想されている。ブラジルの人と話すと、失業手当を受けている友人や家族がいない人を探すのは難しい。

 財政を均衡させる責任を非協力的な議会に負わせるルセフ大統領の的外れな取り組みを受け、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は先日、ブラジルの債券をジャンク債の水準に引き下げた。この決定を契機に、簡易宿泊所から企業の役員室に至るまで、ムードは一段と暗くなった。