(2015年9月16日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 

多くのエコノミストが中国経済は公式統計以上に減速していると見ている (c) Can Stock Photo

 世界経済はリセッション(景気後退)に入りそうなのか。もしそうだとしたら、何がその引き金になるのだろうか。大手金融機関シティグループのチーフエコノミストで、かつては本紙(フィナンシャル・タイムズ)に「Maverecon*1」と題したブログを書いていたウィレム・ブイター氏は最初の問いに「イエス」と答え、2番目の問いに「中国」と答える。

 同氏の見方は妥当に思える。だからと言って、景気後退入りを覚悟しなければいけないわけではない。だが、そのようなシナリオの実現も十分に考えられることは認識しておくべきだ。

 ブイター氏は、世界全体の総生産が減少するとは見ていない。同氏が予想しているのは「グロース・リセッション」、つまり約3%の潜在成長率を大きく下回る経済成長が続く期間の到来だ。2%かそれ以下というイメージだ。同氏の推計では、そうなる確率は40%だという。

 ブイター氏のシナリオは中国で始まる。その他多くの人と同様に、ブイター氏も、中国の公式統計は経済成長率を過大に表示しており、実際は4%程度かもしれないと見ている。これも一般に広く受け入れられているとは言えないが、十分に考えられることだ。

状況が悪化しかねない3つの理由

 この状況はもっと悪くなるかもしれない。第1に、成長率が7%の経済で投資が国内総生産(GDP)の46%を占めるというのは行き過ぎだ。成長率が4%の経済であればなおさらだ。

 第2に、この行き過ぎた投資は債務の大幅な拡大を伴っており、その債務の質にも疑問符がつくことが多い。おまけに、このレベルの投資を維持するだけでも、さらに多額の借り入れが必要になる。

 第3に、良好なバランスシートを持つ唯一の主体である中央政府は、投資減少の穴を埋めることに消極的かもしれない。一方で、国民所得における家計の割合やGDPにおける消費の割合は小さく、この穴を埋める力はない。

*1=「maverick」と「economist」「economics」をかけた「一匹狼エコノミスト」といった意味の造語