(英エコノミスト誌 2015年9月12日号)

一風変わった日本とメキシコの合弁企業が監査当局とのトラブルに直面している。

ローマの兵士は時折、塩で報酬を得たと言われている (c) Can Stock Photo

 メキシコのバハ・カリフォルニア半島を半分ほど下ったところに、まばゆいばかりの光景が広がっている。メキシコ政府と日本最大の商社、三菱商事が共同で所有する世界最大の海塩工場である。

 東京都の3分の1の面積を占める塩原が見渡す限り広がり、日本の塩輸入量の約半分を生産している。

 塩田の擁護者たちは、ここで生産される塩は稀有な品質を持っていると言う。

 天日干しされた白い結晶は、自然が汚されていないためコククジラが繁殖目的で北極からやって来る太平洋岸の入り江のきれいな海水から得た塩なのだ。

 だが、その魅力にもかかわらず、この場所は、世界で唯一の食用可能な岩石の価値をどのように評価するかを巡る激しい論争に巻き込まれた。

 何千年もの間、塩は世界で最も需要の多いコモディティー(商品)の1つだった。ローマの兵士たちは時折、塩で報酬を支払われたと言われている。動物は塩塊を求め、現在の道路の輪郭線を踏みならした。

メキシコ連邦監査院が指摘した「不平等な関係」

 塩には、洗剤の生産から道路の除氷まで、1万4000にも上る工業用途があるが、作るのが極めて安いため、塩を市場に運ぶコストの方が生産原価より高いこともある。

 だが、ほぼ40年にわたり、メキシコの塩を購入し、世界中で販売する独占権を保有してきた三菱商事は時折、その非常に安い生産原価さえをも下回る価格で塩を手に入れてきた。