(2015年9月15日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

欧州連合(EU)の基本的な功績が脅威にさらされている (c) Can Stock Photo

 欧州連合(EU)は前進するために危機を必要としている――ブリュッセルにはそんな、聞くとほっとするような決まり文句がある。しかし、今日の欧州が直面しているさまざまな問題の盛り合わせ――難民、ユーロ、そして英国のEU離脱の危険――は、EUを強化するどころか押しつぶしてしまう可能性の方がはるかに高いように見える。

 EUの基本的な功績と教義のいくつかが、ここ数十年間で初めて脅威にさらされている。

 具体的には、単一通貨ユーロ、域内の国境開放、域内の労働力の自由移動、そしていったん加盟したら永久に加盟国であり続けるという認識がそれにあたる。

 EUはこうした困難に立ち向かうどころか、その圧力を受けてきしんでいる。加盟28カ国は激しく言い争っており、共通の問題への効果的な対策を練ることなどできそうにない。

言い争いの背景にある不穏な状況

 加えて、こうした言い争いはある不穏な状況を背景に起きている。第1に、EUの大部分は高失業と持続不可能な財政を伴う不況に近い状態に陥っている。第2に、内部崩壊しつつある中東の諸問題が数十万人もの難民という形で欧州に押し寄せてきている。そして第3に、政界では非主流派の政治家が台頭している。つい最近も、英国労働党の党首に欧州懐疑派の極左候補が選ばれたばかりだ。

 危機感が強まる一方でEUが対応できずにいるため、加盟国は今後ますます単独で行動したいと思うようになるだろう。英国の場合は、いっそ離脱しようかと考えるようにもなるだろう。

 難民危機はすでに、EU域内の国境開放を巡る重要な考え方を脅かしている。ここ数日間の動きを見ても、ドイツはオーストリアとの国境で出入国管理を始めており、そのオーストリアはハンガリーとの国境で出入国管理を始めている。そして、そのハンガリーは、EU加盟国でないセルビアとの国境を守る有刺鉄線付きフェンスの完成に懸命に取り組んでいる。