診察に訪れた患者で溢れかえる中国の病院(筆者撮影)

 中国からの日本旅行者がピークになる夏休みは終わりましたが、最近は日本旅行も通年化していますし、さらにこれから9月末の中秋節、10月頭の国慶節と連休が続くため中国人の日本旅行熱が衰えることはなさそうです。

 9月の初めに中国で行われた抗日戦争勝利70周年記念軍事パレードの様子は日本でも大々的に報道されましたが、筆者の周辺はいたって平静です。何人かの友人はこの連休を利用して日本へ旅行に行っています。このように政治的な問題はどうあれ、中国人の日本旅行はさらなる盛り上がりをみせています。

 さて、前回の「メイクよりも“肌ケア”に気合を入れる中国の女性」では訪日中国人のお土産として大人気の化粧品について、中国人の化粧品に対する考え方や、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、それぞれの発信すべき情報の違いについて紹介しました。

 今回は、化粧品と同様、中国人観光客に大人気の「医薬品」について、その背景と医薬品の発信すべき情報を紹介したいと思います。

病は自力で治す中国人

 中国の人たちは「病気になったらどうするか」ではなく、「病気にならないように体を常に健康を保つこと」にとても注意を払います。早朝に広場へ行けば太極拳をやっているお年寄りを見かけますし、夕方になれば散歩やダンス、体操をしている人たちで広場や道が溢れかえります。

夕方、広場でダンスをする中国の人たち(筆者撮影)

 それでも病気になってしまったときは、なるべく病院へ行かず、薬も飲まず、自力で治そうとします。

 では、薬も飲まないでどうやって風邪を治すのか。鍼(はり)や、日本では「かっさ」と呼ばれる刮痧(くあしゃー:gua sha)をするのです。鍼は日本でもおなじみの、細い鍼灸用のはりをツボに刺す治療法です。

 「かっさ」を自宅で行う場合は、中華料理で使うレンゲをサラダ油に浸し、そのレンゲで背中をゴシゴシこすります。背中が真っ赤になるまでこすり、体の内部の熱を外に逃がすことで熱を下げるという治療法です。慣れている人は油を使わずに直接こすります。筆者も以前、風邪をひいた際に家内のお義父さんにやってもらったのですが、あまりの痛さに泣いてしまった覚えがあります。

 それでも治らず、薬を飲まないといけない場合は、できる限り漢方薬を使います。漢方薬は中国語で中薬(ちょんやお:Zhong yao)と言います。これに対し、薬局や病院で手に入る普通の薬は西薬(しーやお:Xiyao)と言います。東洋の漢方薬に対する西洋の薬という意味です。