(2015年9月8日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

【写真特集】移民・難民の命がけの旅路

9月6日、ドイツ西部ドルトムントの駅に到着し、涙を流す難民〔AFPBB News

 現在の難民危機は欧州に、欧州諸国が自ら掲げた価値観に恥じない行動ができるかどうか考えることを迫っているとするドイツのアンゲラ・メルケル首相は正しい。残念ながら、その答えは恐らく「ノー」だろう。

 ほぼ500年にわたり、欧州の国民は世界のその他地域を支配し、植民地化し、各地に居住してきた。

 西欧諸国は1945年以降、普遍的な人権に基づき、1951年の国連難民条約などの公式文書に銘記されているポスト帝国主義、ポストファシズムの新たな価値体系に合意した。

 だが、欧州の人々が世界でも最も高い部類に入る生活水準を謳歌し続ける一方で、よりどころを失い、絶望した世界の人々は概して距離を置かれてきた。「第三世界」の飢饉や戦争の痛ましいイメージを目にすると、欧州の人々は慈善団体に寄付をしたり、慈善コンサートに出席したりすることで良心を慰めることができた。

欧州が迫られる決断

 ところが今、難民危機は欧州の人々に、恐らくは高くつき、不都合で、大きな社会的変化を加速するようなやり方で、欧州の価値観を守るよう求めている。

 ミュンヘン駅に到着するシリア難民を歓迎するために集まった群衆は、欧州がそのコミットメントを完全に尊重することを示している――。そう考えると、心が温まるが、それは同時に危険なほど認識が甘い。

 すでに、ドイツ政府さえもが問題となる数について考え直している兆候がある。ドイツは欧州のパートナー諸国を恥じ入らせ、脅すことにより、クオータ制(割当制)を通じて難民の負担を分担させることができるかもしれない。だが、数字は文字通り、帳尻が合わない。