安保法案抗議デモ、国会前を埋め尽くす

国会周辺で安全保障関連法案に抗議するデモに参加する人々(2015年8月30日撮影)〔AFPBB News

 東京西郊の街を歩いていたら、某党が「安保法案」阻止を訴えていた。持っているプラカードには「若者を戦場に送らないために」などと書いてある。

 最大野党の民主党が、安保法案の衆院通過後に参院での成立阻止を目指し、国会の外での国民運動を推奨して以降、他のいくつかの野党も同調して動いている。

 問題は、全国紙の大分が反対運動は大々的に報道するが、賛同の動きはほとんど報道しないことである。社説や論説はともかくとして、国民に正しい判断を仰ぐためにも、「報道」は基本的に偏ってはならないのではなかろうか。

偽善的平和論

 日本の安全は憲法が保証するものではない。また日米安保条約が保障するものでもない。憲法9条にかかわらず、憲法全体の趣旨を踏まえ、どこまでも国際情勢に対処するために、一部には違憲とも言われる自衛隊を整備し、政治が日本の安全を担保してきた。

 しかし、実際には国際情勢に無関心で、ただ争いがない社会を夢見る空想的平和主義者や、あるいは質(たち)の悪いことに国際情勢の現実を知っていながら、憲法を楯にした「偽善的平和論」を唱える人士が充満している。

 偽善的平和論の用語は、戦前に首相となった近衛文麿が貴族院副議長の時、「世界の現状を改造せよ 偽善的平和論を排撃す」で用いたものである。

 ただ、近衛はこの用語を第1次世界大戦後の国際社会における平和論について用いた。端的に言えば、日本が満洲問題に関わったことを国際連盟などが責めるのを「偽善的」と見なし、再考を促そうとしたものである。

 近衛は、第1次世界大戦は現状維持を好都合とする持てる国(近衛は先進国という)と現状打破を主張する持たざる国(後進国)の戦いで、現状維持を望む国が平和主義となり、現状打破を望む国が侵略主義となっただけだと主張した。

 そして、「先進国は今日迄に、随分悪辣なる手段を用ゐて、理不尽に天然資源の豊饒な土地を或は割取し、或は併合し来った。此事は植民の歴史に明なる所である」と歴史を振り返り、「自分等が十分其版図を広めた後は、此現状を維持する為に平和主義を唱え、此現状を打破せんとするものに対しては、人道正義の敵であるとして圧迫を加ふる。凡そ世の中に是位勝手な話は無い」と矛盾を指摘し、これを正義と暴力の争というのは甚だしい偽善であるとして、偽善的平和論と述べたのである。

 今日、植民地云々はあり得ないが、軍事力を著しく増大して、自国領でない島嶼までも勝手に自国領に組み込む暴挙を行いながらも、平和的台頭と称する国が隣にあり、我が国の安全どころか存立さえが脅かされそうになっている。