(1) 世界市場のアキレス腱、中国

バンピーな世界株式

 世界経済と金融市場のアキレス腱が中国であることがはっきりしてきた。国際金融市場を不安にしている資源国やアセアン、アジアNIES諸国の通貨下落、経済悪化はひとえに中国経済の急減速を原因としている。

 鉄道貨物輸送量、粗鋼生産量、発電量、輸出・輸入額など中国の基本的なミクロデータはいずれもゼロないしはマイナス圏にあり、7%成長という公式統計は実態を反映せず、中国の経済は失速したという観測も誤りとは言えないかもしれない。

 上海株式の再暴落を引き金に世界主要国株式はここ1週間で軒並み10~20%の急落症状を呈し、ヘッジファンドの仕掛け売りが功を奏した形となった。中国の経済金融危機が醸成されているという可能性が排除できなくなったのである。

まだ暗雲は晴れない

 急落に伴い、当然のリリーフラリーが起きている。売り方の買戻し、日本の投資家などのポートフォリオリバランスによる株式比率引き上げ(GPIFなどの投資資金は日本株急落で日本株式投資比率が急低下しており、比率を復元させるための新規買いが必要となる)はある時点から株式需給を大きく改善させ、株価のリバウンドをもたらすだろう。

 しかし、その株式反発が持続性のあるものになるためには、①中国経済が着実な成長軌道に戻ること、もしくは、②中国経済の悪化が世界に波及しないこと、のいずれかが満たされる必要がある。それの見極めがつくまでは、中国問題が市場の重石となり続けるだろう。

 以下では中国リスクの鍵となる、国際収支と対外バランスについて分析を試みる。

経済誌記者、中国株式市場混乱させたと「自供」 新華社

中国・上海の証券会社で、株価を見て頭を抱える男性(2015年8月26日撮影、資料写真)。(c)AFP 〔AFPBB News

(2) 資本逃避激増を示唆する外貨準備と対外純資産の減少

中国外貨逼迫の進行、外貨準備、対外純資産ともに急減

 中国のアキレス腱はどこにあるかと言えば、それは対外資本収支であろう。中国の絶大な競争力に基づく貿易黒字・経常黒字が中国経済を牽引したのは2009年までであり、それ以降中国経済成長を牽引したのはもっぱら投資であったが、その投資を可能にしたのは巨額の対外純資本流入であった。この資本流入に大いなる変調が起きている、ここに中国のアキレス腱があると言える。