(英エコノミスト誌 2015年8月29日号)

中国経済に関する懸念は行き過ぎている面がある。だが、投資家が神経質になるのは当然だ。

英エコノミストの社説の原題「The Great Fall of China」は「The Great Wall(万里の長城)」にひっかけたもの (c) Can Stock Photo

 かつては、金融メルトダウンの効果音と言えば、取引所のフロアに響くトレーダーの叫び声だった。今では、データセンターのサーバーがたてるハム音であることの方が多い。アルゴリズムが買い手と売り手をマッチングしようとしている音だ。だが、大暴落というものが、理屈抜きに蔓延する恐怖にとらわれて起きるという点は、今も昔も変わらない。売ろうとする衝動が、踏みとどまれという助言を圧倒してしまうのだ。

 中国の株式市場が2007年以来最大となる1日の下げ幅を記録したことで、多くの人がまた胃を痛めている。中国の国営メディアでさえ、8月24日を「ブラックマンデー」と呼んだ。

 南アフリカのランドからマレーシアのリンギットまで、新興国の通貨は軒並み急落した。商品(コモディティー)価格は、1999年以降では例のない水準にまで下落した。

 感染は欧米の市場にも及んだ。ドイツ株価指数(DAX)はピーク時に比べて20%以上落ちこんだ。米国株は乱高下した。ゼネラル・エレクトリック(GE)の株価は、一時20%以上も下落した。

 先進国の市場は、やや持ち直した。だが、3つの懸念が残されている。1つ目は、中国経済が根深い問題を抱えているということ。2つ目は、新興国が本格的な危機に対して脆いということ。そして3つ目は、先進国市場の長期に及んだ上げ相場が終わったということだ。

 こうした懸念のうち、いくつかの面は誇張され過ぎているし、見当違いの面もある。とはいえ、8月下旬のパニックは、世界経済の不調は現実のものだという不気味なメッセージを発している。

まずは動いてから、じっくり考える

 この伝染病の発生源は、株価が下がり続けている中国だ。8月上旬に人民元が切り下げられて以降、世界の株式市場からおよそ5兆ドルが消え去った。この切り下げが、一連の低調な経済指標や、株価の暴落を食い止めようとして失敗した中国政府の施策と共に、世界2位の経済大国がハードランディングに向かっているとの不安をかき立てた。

 輸出は減少を続けている。株式市場は、6月のピーク時から40%以上も下落している。この下げ幅は、ドットコムバブルの崩壊時よりも大きい。