(英エコノミスト誌 2015年8月22日号)

新たに開発された遺伝子操作の技法は大いに期待を抱かせるものだ――ただし、その使用を規制するルールが必要とされている。

ヒト受精卵の遺伝子を「編集」、中国研究に世界の科学者が異議

仏マルセイユの研究施設で撮影された、マウスの受精卵に対する遺伝子操作の過程を捉えた顕微鏡画像〔AFPBB News

 ゲノム(遺伝情報)は、わずか4文字のアルファベットで記述されている。人間、さらには数千に及ぶその他の生物種についてDNAの塩基配列を解読し、研究や比較を進めることは、科学の世界では当たり前になっている。

 そして今、遺伝情報を短時間で安価に「編集」することを可能にする新技術が登場してきた。

 この技術を使えば、生命に危険を及ぼす深刻な遺伝子異常を修正できる可能性がある。

 また、ゆくゆくはこの技術を用い、両親が望み通りの子供をオーダーメイドで作り上げる時代が来るかもしれない。

 この技術は「CRISPR-Cas9(クリスパー・キャスナイン)」、あるいは単に「CRISPR」と呼ばれている。この技術では、DNAの特定の部分を標的にするRNA(遺伝情報伝達を担う化学物質)と、不要な遺伝子を切り取って新しい遺伝子を貼り付けるヌクレアーゼと呼ばれる酵素を利用する。

驚くほど広い応用範囲

 ほかにもDNAを編集する方法は存在するが、CRISPRでは、かつてないほど簡単に、手早く、正確に操作することが可能になるという。

 この技術の応用範囲は驚くほど広く、研究者たちはCRISPRを活用してアルツハイマー病からがん、HIVまで、ありとあらゆる疾病の治療法開発に取り組むようになった。この技術で、がんを正確に狙う遺伝子を患者の免疫系に送り込めれば、腫瘍学に新しいアプローチが開かれる可能性がある。

 また、テイ=サックス病や嚢胞性線維症などの遺伝性疾患を発症した患者の細胞に正常な遺伝子を挿入するなど、遺伝子治療の進歩を加速させる期待もある。