(英エコノミスト誌 2015年8月8号)

アイデアは経済を動かす燃料だ。現在の特許制度はアイデアに報いる方法として、あまりにひどい。

特許は本来、イノベーションを促進するはずだが、現実は逆に阻止している (c) Can Stock Photo

 1970年、米国は作物学が持つ潜在な力を認識し、農業分野の特許の範囲を拡大した。特許はそもそも、創意工夫に対して報酬を与えるものだから、これは進歩を活性化させたはずだ。

 だが、保護を手厚くしたにもかかわらず、1970年の変更や、1980年代のさらなる制度拡大は、民間の小麦研究の活性化にも収穫高の増加にもつながっていない。

 全体として、米国農業の生産性は制度変更以前とほぼ同じように、緩やかな上昇を続けている。

 ほかの業界でも、特許制度の強化がイノベーションの促進につながっている様子は見られない。それだけでも期待外れだが、それよりはるかに悪い事態を示唆する証拠もある。

知識を広めるどころか、イノベーションを阻む現実

 特許は本来、知識を広めるためのものだ。特許保有者には、各自の革新技術の詳細を提示し、誰もが見られるようにすることが義務づけられている。だが多くの場合、特許保有者はそうしない。というのも、特許を専門とする弁護士が、特許内容を不明瞭にする技に長けているからだ。

 その代わりに特許制度が生み出したのが、パテント・トロールと自己防衛的な特許保有者からなる寄生的な生態系だ。彼らの狙いは、イノベーションの阻止、あるいは少なくとも、自分たちが戦利品の分けまえを手にできなければ、イノベーションの邪魔をすることにある。

 ある初期の調査によれば、半導体ビジネスの新規参入者は既存事業者からライセンスを購入しなければならず、その額は2億ドルにも上ったという。

 特許はイノベーションの爆発を促すはずのものだ。だが実際には、既存事業者の優位性を固定化するために利用されている。