「空手形」になりそうなサウジアラビアの減産表明

シェール企業はもはや虫の息、「債券バブル」崩壊でとどめか

2015.08.10(月) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44491
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 サウジアラビアの原油生産量を決める要因は海外にもある。米国のシェールオイルよりも、ロシアが強力なライバルになりつつあるのだ。

 8月3日付日本経済新聞は「ロシア産原油が相場の攪乱要因」と報じた。ロシアはソ連崩壊後で最高水準の原油生産量に達している。ロシアの油田は生産コストが低い上、ルーブル安による輸出価格の低下で競争力が増しているからだ。今年6月から2カ月間に過去3年間で最大の規模となる460万バレルの原油を米国に輸出するなど、輸出攻勢を強めている。

 実はロシアの増産攻勢の背景には苦しい台所事情がある。8月4日付日本経済新聞は「ロシア・ルーブルが弱含み、原油安受け再び下げ加速」と伝えている。ロシア・ルーブルは2014年12月に1ドル=78ルーブルの過去最安値を付けて以降持ち直していたが、最近の原油安を受けて同60ルーブル近辺と約5カ月ぶりの安値圏で推移している。「ロシアのGDPは9%低下する可能性」(IMF)があるため、国内経済支援の原資を稼ぐために増産せざるをえない。サウジアラビアをはじめとするOPEC諸国が減産すればロシアが利するだけである。

 以上のような状況を勘案すれば、サウジアラビアの減産表明は残念ながら「空手形」となる可能性が高い。

大手石油各社の業績が悪化

 8月5日のWTI先物価格は、米国の原油在庫が2週間続けて大幅に減少したにもかかわらず、一時は1バレル=44.88ドルと節目の同45ドルを下回った。5年後の受け渡しとなるWTI先物価格も2007年2月以来の安値をつけており(1バレル=62ドル台)、エネルギー市場調査会社の米IHSは「原油価格は何カ月も1バレル=40ドルを下回る水準で推移する必要がある」と指摘している(8月3日付ブルームバーグ)。

 世界の原油市場の供給過剰が解決までに数カ月、というよりも数年間を要する問題であるとの見方が強まる中、欧米の大手石油各社の業績も悪化している。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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